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海老原一司Blog -論理思考講師×プロジェクトファシリテーター

営業ヒアリングを極めるBANT活用8つのコツ

営業ヒアリング研修講師の海老原です。

営業ヒアリングでは、ヒアリング項目の「型」を持っていると楽です。営業ヒアリングの基本かつ汎用的なフレームワークがBANTです。

 

0. BANTは営業ヒアリングの基本

 

BANT(バント)とは、「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(ニーズ)」「Timeframe(導入時期)」の4つの頭文字をとったものです。BANTの4つの項目について、それぞれ説明します。

0-1. BANT Budget(予算)

  • 商談の予算額は、いくらか?
  • 予算は確保済みか?予算は確保済みか? まだなら予算確保できそうか?誰が予算額を決めるか?

0-2. BANT Authority(決裁権)

  • 顧客担当者の決裁権限は?(特に予算金額)
  • 今回の最終決裁権限者は誰か?(予算稟議の最終承認者は?)
  • 決裁判断に直接・間接的に影響が大きいキーマンは誰か?また、キーマンの判断軸は何か?

0-3. BANT Needs(必要性)

  • どんな必要性か?必要性は確かにあるか?(個人意見ではなく、企業目線で本当に必要か?)
  • ニーズは強いか?その根拠は?(できるだけ、定量的に試算すること)

0-4. BANT Timeframe(導入時期)

  • 導入時期はいつか?(できれば全体の検討スケジュールプロセスを掴む)
  • 導入決定までのプロセスで顧客の誰が、いつ、何をするか?(ここを営業がサポート)

1.BANTのコツ1 Budget(予算)は最初に確認

1つ目のBANTのコツは、Budget(予算)ヒアリングの順番です。

予算のうち、まず確認するべきは、予算額です。営業ヒアリングの基本中の基本ともいえますが、意外としっかり確認されない項目です。

私が重要と思うのは、商談の早い時点から予算額の概算を確認すること。なぜなら、予算額によって、提案内容が異なるからです。また、提案内容が異なれば、営業ヒアリング内容も異なります。

商談の最後になって、予算額を聞く場面をよく見かけます。しかし、最後に予想予算額が大幅に異なればヒアリング失敗です。

ニーズヒアリングには、提案仮説を持つべきです。そして、提案には、予算仮説を持つべきです。予算仮説の検証は早めに行いましょう。

 

Budget(予算)次第で、聞くべきAuthority、Needs、Timeframeも変化

Budget(予算)

10万円

100万円

1000万円

Authority(権限)

課長決裁

部長決裁

役員決裁

Needs(必要性)

課長の課題

部の課題

会社の課題

Timeframe(時期)

1ヶ月

3ヶ月

6ヶ月

 

2.BANTのコツ2 予算の強い根拠を探す

2つ目のBANTのコツは、Budget(予算)の根拠です。

予算額が確認できたら、その根拠の強さを見極めます。例えば、顧客の言った予算通りの提案をしたのに、結局予算が取れずに商談が頓挫したり、最後に大幅な値引きを求めらたりしたことがないでしょうか。これは、多くの場合予算額の根拠の強さが確認できていないことが原因です。

注意すべき1つ目は、顧客窓口担当者が言っているだけ、という場合。上司の決済権限者の意向を確認せず、期待だけで予算額を言っている窓口担当者も多いものです。上司は、どう思っているのか? 過去に同等の内容で予算が降りたときはあるのか?などの確認が必要です。

2つ目は、そもそも予算を持っていない、予算をとっていない場合です。予算額を確認したときに、「見積もりをみて考えます」といったはぐらかすような答えがあったら要注意です。単なる情報収集で、そもそも商談になっていないことも多いです。このような、まだ商談になっていない情報収集ステータスの顧客に対して、膨大な時間をかけ提案書を作ってしまう営業をよくみかけます。しっかりした見極めが重要です。

 

 

 

 3.BANTのコツ3 稟議書の承認フローを把握

決裁権限を理解することは、日本企業では「稟議書の承認フローと承認権限を把握すること」とほぼイコールと思って良いでしょう。

最終決裁権限者が誰かだけに、注力する営業パーソンも多いようですが、特に大きな商談、普段と異なる商談では、顧客意思決定メカニズム全体を理解するようにしましょう。

 

4. BANTのコツ4 稟議起案者を押さえる

商談の最初に知りたいのが、「稟議起案者」です。より具体的には、顧客が社内で購買稟議を通すための稟議書を書く主体は誰か?ということです。

最終承認者も重要ですが、稟議起案者が先です。というのは、特に新規商談では、話している相手が稟議起案者でない場合も多いのです。

商談成立とは、言い換えれば、顧客の起案者が「これなら稟議が通る」と思える情報を提供すること。稟議起案者を把握するまでは、商談が始まっていないと思ったほうがよいでしょう。

例えば、中堅社員のAさんが稟議起案者。しかし、Aさんの後輩のBさんが情報収集のため1人でコンタクトしてきた。こんな場合は、Aさんに会うこと、最低でもAさんの状況把握が第一です。

  

5.BANTのコツ5 個人と組織ニーズを区別

営業ヒアリングで、把握すべきは「個人ニーズ」か「組織ニーズ」か。あえて言い切れば企業組織である限り、必ず組織ニーズが優先されます。
個人個人の思惑は重要です。しかし、BtoB営業で優先されるべきは、企業組織としてのニーズです。企業全体、あるいは1部門の場合もあるでしょう。いずれにせよ、個人の集合体としての組織の意思決定が重要です。

 

6.BANTのコツ6 ニーズはゼロイチで考えない

営業ヒアリングの典型的失敗の一つが、ニーズをゼロイチで考えてしまうこと。つまり、ニーズがあるか/ないか?だけで考えることです。

「できれば対応してほしい」といった細かな「弱いニーズ」にいくら対応しても時間がかかりますし、お客様には刺さりません。

必要なのは、たった一つでもよいので、「強いニーズ」を探すこと、強いニーズの課題解決をすることです。

 

1つの強いニーズ >> たくさんの弱いニーズ

 

  

7.BANTのコツ7 時間軸は、購買検討プロセスで把握

Timeframeとは、単純には商品・サービスの導入時期です。

ただ、BtoB営業としては導入時期はもちろん、導入までの購買決定プロセスを把握することが重要です。

例えば、以下のようにプロセスごとに概算時期を把握します。

  1. 商品の基本情報収集:9月いっぱい
  2. 導入商品の要件決定:10月
  3. 導入商品の比較検討:11月
  4. テスト運用:12月前半
  5. 見積・稟議:12月後半

 プロセスを把握し、そのプロセスに沿ったアクションをとるのがBtoB営業の基本です。

 

8.BANTのコツ8 「誰が」「いつ」「何を」まで把握

 購買検討プロセスの時間軸の次は各プロセスの登場人物を把握します。BtoB営業では、たくさんの登場人物がいて、キーマンがプロセスごとに移り変わります。例えば、

情報収集段階では、稟議起案をする担当者。要件詳細を詰めるときは技術部門。稟議では財務部門。など、キーマンの部門自体が変わることもしばしばです。

これを、DMU(意思決定構造)マップで把握します。

 

 9.BANT活用上級編

BANTでは、4つの項目をそれぞれ営業ヒアリングします。しかし、項目単体だけでなく、2つの項目の組み合わせ活用をすると、より決めの細かい営業ヒアリングができます。

9-1. Budget(予算)×Authority(決裁権)

営業ヒアリングでは、はじめにBANTの予算額を把握すべきと書きました。このとき、「Budget(予算)」と「Authority(決裁権)」をセットで確認したいところです。

決裁権限、言い換えると自分の権限内で稟議承認できる金額は、通常役職で変わります。

例えば、下記のように稟議書規程が定められています。

  1. 課長:決裁金額10万円まで
  2. 部長:決裁金額100万円まで
  3. 事業部長:決裁金額500万円まで

上記は、金額によって組織の階層が上がっているパターンです。

ときには、縦の動きだけでなく、横の動き、つまり他の部署が関わる場合があります。

例えば、「100万以上の稟議は、財務部を稟議承認者に追加すること」といった稟議書規程がある企業もあります。

 

 

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