BtoB営業の顧客攻略地図-DMUマップとは
営業ヒアリング講師の海老原です。
BtoB営業で重要な概念がDMU(Decision Making Unit)です。「意思決定者」と訳されることも多いですが、私は「意思決定構造」「意思決定メカニズム」と捉えています。BtoB営業に必要なDMUマップの使い方事例を交えて紹介します。
1.なぜDMU Decision Making Unitなのか?
1-1.BtoBとBtoCの意思決定の違い「Unit」
まず、注目すべきは、DMUのU=Unit(単位、部隊、など)ということ。つまり、Unitとは、人の集合・組織のことです。
BtoCでは、多くの意思決定は消費者個人、つまり1人で行われます。しかし、BtoBでは、購買意思決定が組織単位で行われます。これが、BtoB営業がBtoCと大きく異なる部分です。
1-2.DMU=意思決定者でよいのか?
DMUを「意思決定者」、または「最終意思決定者」と訳す場合も多いです。これは、稟議を最終的に承認する個人、例えば、部長や本部長といった組織長をイメージします。
このDMUを一個人と考える捉え方は、BtoB営業として問題があるでしょうか。確かに、意思決定者は重要です。また、トップダウンの意思決定もあるでしょう。
しかし、多くの場合トップの最終権限者の意見だけで、意思決定がなされることはありません。大なり小なり、組織としての意思決定メカニズムが働くものです。例えば、どんなにトップの権限が強くても、トップの組織長が意思決定するための情報は、部下から上がってきます。
そのため、企業をUnit=組織として考える必要があるのです。
2.DMUマップで意思決定構造を掴む
2-1.DMUマップとは
DMUマップを作って、顧客の意思決定構造を分析した例を示します。
こちらは、製造業の工場のDMUマップです。この場合、工場ごとに「生産技術部」「製造部」「購買部」という3つの組織をがあります。
このように、まずDMUの全体像を把握します。そして、
- 「各意思決定関与者の関心事はなにか?」
- 「どのように意思決定に影響を及ぼすか?」
- 「意思決定に及び素影響力はどのくらいか? 自社に対する態度は?」
などを把握していきます。
2-2.DMUマップに書くのは、組織でなく個人まで
DMUマップの書き方は様々ですが、まずは事例のようにシンプルな組織構造を把握しましょう。
その際、部署単位だけでなく、1人1人誰がいるかまで把握することが重要です。もちろん顧客従業員全員を把握する必要はありません。しかし、意思決定構造に影響しそうなキーマンは確認必要です。例えば、事例では製造部の「班長」は、工場の意思決定に関わるようなので、重要人物(キーマン)として把握します。
3.DMUマップで顧客攻略共通言語を作る
DMUマップは、基本的にBtoB営業が1社1社の顧客の意思決定構造を掴むために使います。
しかし、私はDMUをマップには、もう一段上の使い方があると考えています。それは、組織に顧客理解のための共通言語を作ることです。
DMUマップは、顧客ごと、場合によっては同じ顧客でも商品ごとによって異なるのが普通です。しかし、ターゲット顧客層がある程度絞れている商品・サービスでは、横展開可能な、DMUマップの標準テンプレートを作ることが可能です。
3-1.マンション組合の典型的DMUマップ
私は、東邦レオ株式会社にて顧問を努めています。お客様である典型的マンション組合のDMUマップを作成しました。
マンション組合の意思決定に関わる主要プレイヤーです。
- 理事会
- 自治会
- 修繕委員会
- 植栽委員会
- 植栽系クラブ(公式)
- 植栽系クラブ(非公式)
3-2.標準テンプレートで全営業がDMUマップ作成
東邦レオでは、マンション組合のお客様を理解するために典型的なDMUマップテンプレートを作成。テンプレートを用いてお客様ごとにDMUマップを作っています。
DMUマップを1から作るのは、大変な作業です。しかし、標準テンプレートを使うことで、すべての営業担当者が、お客様のDMUマップを自分自身で作成できています。
マンション組合DMUマップという共通言語をつくることで、各営業担当はすばやくお客様を把握することができます。社内の連携やサポートもスムーズになりますし、顧客の引き継ぎも楽になります。
3-3.営業だけでなく現場作業者ともDMUマップで会話
DMUマップは営業担当者が作成します。しかし、営業だけでなく、植栽管理作業の実務を行う、現場リーダーやクリエイターにもDMUマップを使って顧客情報を共有しています。つまり、事業に関わる全員がDMUマップという共通言語を使ってコミュニケーションできるようになっています。