海老原の論理思考講師Blog

海老原一司Blog -論理思考講師×プロジェクトファシリテーター

【理系の論理】原発による放射線の危険性を科学的に定量計算してみる

海老原です。

 

最近そこまで炎上しなくなってきましたが、放射線(放射能)に対する議論についてかなり、熱戦が繰り広げられていましたね。

 

さて、サイエンスマニアの私、昔「原発による放射線の危険性について科学的に、計算したのですが、そろそろ書いても大丈夫だろう。ってことで、あげてみます。

炎上しないかな。。w

 

1.放射線の危険を科学的に本気で定量的に計算してみる

1-1.放射能の危険を語るなら、必ず読むべき本

サイエンス好きな私は、「今この世界を生きているあなたのサイエンスⅠ」を読んでいます。しばらく前に有名になりましたね。


サイエンス界の重鎮かつプロフェッショナルが、原子力、太陽電池など、温暖化など、現代社会の大きなイシューが、一般人にも分かるように科学(物理学)の側面から書かています。

原題は "Physics for future presidents: the science behind the headlines”。

つまり、未来の大統領のための物理学。大統領になるなら、基本的な科学知識を理解してないと判断間違えますよ。勉強しておきましょう。という本ですね。

 

1-2.放射線の危険について、サイエンスマニアとして、本気で分析してみることにした

「今この世界を生きているあなたのサイエンスⅠ」では、放射能の危険性についても書かれています。気になっていろいろ計算してみることにしてみました。

放射能というのは、危険なのか?危険ならばどの程度危険なのでしょうか?
抽象論だけではなく、もっと定量的に突っ込んで計算してみましょう。

2.放射線のふたつの危険:放射線症とガン発生確率の上昇

まず、放射線による健康被害は、大きくふたつ。「放射線症」と「ガン発生確率の上昇」にわけられます。

逆に言うと、「このふたつしかない」というのは一つのポイントです。

爆発とかしないですからね(^^)

 

2-1.放射線症

放射線症の基礎知識。

・100レム以上の放射線をあびると吐き気をもよおすなどの放射線症になる

(200レムを超えると死亡する危険性もでてくる)
・ただし、ほとんどの病気にある「閾値効果」というのがあり、100レム以下ならば「体に変調きたすことさえなく体のダメージの大部分は自己修復される」
(閾値を超えた時だけ病気になる。閾値以下では、何も起きない)

2-2.ガン発生確率の上昇

ガン発生確率情報の基礎知識

・2500レムで、ガン発生100%とみなせる
・逆算して、「1レム放射線を浴びるとで、0.04%」ガン発生確率があがる
(なお、通常ガンで死亡する率は20%。これは、著者がアメリカ人なので、アメリカの数字か?日本では、40%程度)

 

3.放射線症、ガン発生確率の情報のそれぞれについて、放射線の危険度を定量的に計算してみる

さて、これらの情報をもとに放射能が、危険になる可能性について、定量的に計算してみます。

3-1.その前にまず、レム→マイクロシーベルト換算

まずは、「レム」では、よくわからないので、311直後によく話題になっている単位「マイクロシーベルト」に変換してみます。


1シーベルト=100レム
1レム=10,000マイクロシーベルト


3-2.放射線症への影響

まずは、放射線症について考えてみましょう。

放射線症になる条件は「ある一定期間に、100レム、つまり1シーベルトの放射線をあびること」です。


この「ある一定期間」つまり、自己修復できない期間の算出は、ちょっと難しい。

たとえば、1年とか長い時間かけて、じわじわ放射能を浴びた場合、途中で自己修復されてしまうでしょう。
(放射線が、閾値以下になってしまう。
人間は、日常的に放射線を浴びており、自己修復能力がああります。
太陽の光、温泉など、いろいろです)
 
ということで、自己修復できない程度の、短い時間で放射線をあびないと影響はない。

ここでは、1ヶ月=720時間として計算してみることにします。

(1ヶ月以内に1シーベルト浴びる)

すると、求めたい値をAとすると
 1シーベルト=720時間×A
 A=1389マイクロシーベルト/時

 

3-3.ガン発生確率上昇への影響

次に、ガン発生確率の上昇率について考えてみましょう。

以前調べた2011/4/21の記事によると、原発から3キロの一番放射線が強い地域の屋外で毎時110マイクロシーベルト、とあります。

110は、切りが悪いので(笑)、100マイクロシーベルトとして計算してみましょう。

 

この場所の屋外に、一定期間連続でいるという環境を考えてみます。
<1年間の場合>
 1年間であびる放射線量
 =100マクロシーベルト/時 × 365日 × 24時間
 =876,000マイクロシーベルト
よって、
 ガン発生確率(の上昇率)
 =876,000マイクロシーベルト / 2500レム
 =4%

<1ヶ月の場合>
 1ヶ月で浴びる放射線量
 =100マクロシーベルト/時 × 30日 × 24時間
 =72,000マイクロシーベルト
よって、
 ガン発生確率(の上昇率)
 =876,000マイクロシーベルト / 2500レム
 =0.3%

 

なお、ただし、ここでは、以下の仮定があることに注意する必要があります。
ガン発生には、「閾値効果が『ない』」。


これは、本に書いてなかったですね。

閾値効果があるのであれば、放射線量が、ある一定以下であれば、いくら長期間あびても、発生確率は、上がらないでしょう。
個人的意見としては、人が日常的に放射線量を浴びていることから考えて、「閾値効果はある」でしょう。しかし、放射線症に比べると非常に低い閾値なのではないかと思います。

 

4.まとめ

4-1.定量結果まとめ

『1389マイクロシーベルト/時以上の環境に連続して1ヶ月居続けると放射線症になる可能性がある』

『100マイクロシーベルト/時の場所に1年間居続けるとガン発生確率が4%、1ヶ月居続けると0.3%あがる(可能性がある)』

 

4-2.この結果をどう判断するか?危険か、安全か?

さて、これを「安全」とするか「危険」とするか?

「今この世界を生きているあなたのサイエンスⅠ」でも、似たような話がでてきましたが、これは、もう科学の領域ではなく、「主観的判断」の領域となります。

これを「安全」とするか、「危険」はあなた次第。
さて、どちらでしょうか?

 

4-3.個人的見解:原子炉に相当近くない限りは、まったく気にならないレベルの危険性

ちなみに、私個人としては、
・放射線症について
1000マイクロシーベルト以上のところに行くこと個人としては、ありえないので無視。
(報道を見る限りは、これは、事故を起こした原子炉内の放射線量。実際に事故現場で作業する方は、危険なので、閾値内に抑えるよう時間を制限する必要があるでしょう)

・ガン発生確率について
通常ガン発生確率20%(日本人40%)からすると、4%上がるとちょっとやだなぁ。
なので、原発3キロ以内圏内ぐらいのところだったら、逃げます。
ただし、10キロ外ぐらいなら、どんなに多くても1マイクロシーベルト程度(1年で0.04%上がる)なので、気にしませんね。

 

最後に

個人的見解としては、全く気にならないレベルの危険性と判断しました。

しかし、これでもやはり危険なのだ、という人もいるでしょう。

この違いは、どこからくるのか。私が以前考えた「01思考」と今読んでいる本「ファーストアンドスロー」にでてくる「ヒューリスティックバイアス」で、科学的かつ論理的に、ほぼ説明できそうです。

 

この話は、また今度書いてみたいと思います。

 

参考図書

今この世界を生きているあなたのためのサイエンス 1

今この世界を生きているあなたのためのサイエンス 2