海老原の論理思考講師Blog

海老原一司Blog -論理思考講師×プロジェクトファシリテーター

カオスプロジェクトのプロマネ資質「意志決定力」と「想像力」

海老原です。
これまで、新規事業などで、カオスプロジェクトのプロジェクトマネジメントを多く経験してきました。
不確実性が高いカオスプロジェクトのプロジェクトマネジメントに必要な資質について考えます。
 
プロジェクトマネジメントスキルは様々です。しかし、高度なスキルが求められるカオスプロジェクトで必要で、かつ、大きく差が出るプロジェクトマネジメントの資質は「意志決定力」「想像力」だと思います。
 

1.不確実性の高いカオスプロジェクト

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カオス状態

1-1.20年のカオスプロジェクト経験

新規事業プロジェクト・マネジャー10年、コンサルタント5年などなど、社会人になって20年以上、常に「不確実性の高いカオスプロジェクトのプロジェクトマネジメント」ばかりやってきました。いわゆるVUCAなプロジェクトです。

1-2.カオスになるプロジェクトとは

カオスプロジェクトの多くは、「誰もやったことがないプロジェクト」です。世の中で初はもちろん、社内に経験者がいないプロジェクトは、カオスになります。
 
スケジュール作成は、プロジェクトマネジメントの基本です。しかし、誰もやったことがないので、妥当なスケジュールを作ることも難しい。また、プロジェクトの実現性判断や、想定プロジェクトリスクを洗い出すことも困難です。
 
経験者がいない未踏プロジェクトでは、いつ何がおこるかわからない、カオスな状況になります。最初のプロジェクト定義からして曖昧な場合が多いです。
 

2.カオスプロジェクトに必要な2つのプロマネ資質

 カオスプロジェクトのプロマネばかりやってきた経験から、カオスプロジェクトに必要なプロマネ資質が2つあります。それは「意志決定力」「想像力」です。

2-1.プロマネ資質その1ー意志決定力

意志決定ポイントは無数
プロジェクトは意志決定の連続。不確実性の高いプロジェクトでは、粒度の小さいところまで含めると数百から数千の意志決定があります。
 
プロジェクト全体で議論・合意すべき意志決定ポイントを絞れるか
このたくさんの意志決定を高い精度で高速にできるか。
逆にいうと、いかにプロジェクト全体で合意しなければいけないような少数の意志決定論点を選べるかが、プロマネの腕の見せ所です。
 
1,000個の意志決定があるなら、全部議論したらきりがありません。そのうち議論すべき数%=10~30個程度の重要な意志決定論点を選ぶ必要があります。
 
細かい意志決定を自信を持って、高速に判断できるか
1,000個の意志決定で、議論すべき数%=10~30個程度の重要な意志決定論点を選びます。それ以外の970~990個の意志決定は、プロジェクトマネジャーが自分自身の判断で行います。この細かいたくさんの意志決定を自信を持って、高速に判断できるかが、カオスプロジェクトのプロマネに求められます。

2-2.プロマネ資質その2ー想像力

意志決定力に加え、重要と思うのが「想像力」です。
ここでいう「想像力」は、クリエイティビティではありません。未来を予測する力、想定する力、といえば良いでしょうか。
例えば、「プロジェクトで何がおこるか?」「ボトルネックは何か?」「リスクは何があるか? そのうち最も起こりそうで、起こるとまずいものは何か? どう対策するか?」
カオスプロジェクトを回すには、プロマネには、抜きん出た想像力が必要です。
 

3.プロマネ資質「意志決定力」高めるには

3-1.プロジェクトオーナーとプロジェクト定義をしっかり握る 

自信を持ってプロジェクトの意志決定をするためには、何が必要でしょうか。メンバー理解も必要ですが、あえて1つに絞るなら「プロジェクトオーナーの目的に沿っていること」が必要です。

  • プロジェクトオーナーの目的・達成したいことが、明確にわかっている。
  • プロジェクトオーナーとプロジェクトの目的・アウトプット、スケジュールなどが、明確に握れている。

プロジェクトオーナーが上位目的として求めていることがわかれば、個々の意志決定は、「上位目的が実現できるか?」という基準で、いちいちオーナーに確認しなくても、意志決定できるはずです。

プロジェクトマネジャーが自信を持って、意志決定するには、「『絶対的に』正しい意志決定ができるか」はもちろん「『オーナーの目的に沿った』正しい意志決定ができるか」が重要です。

 

 

4.プロマネ資質「想像力」を高めるには

 4-1.まずは質より想像量

想像力を高めるには、身もふたもないことを言えば、とにかく何度も何度も想像することです。まずは量。ただ、想像する時のコツはあります。相手の立場に立つことです。
 

4-2.相手の立場にたてる想像力

プロジェクトメンバーやプロジェクト外のキーマンの立場に立って、プロジェクトをすすめる上で、どんな行動をとるか? その結果、誰がどう感じるか?を想像してきます。
  • プロジェクトメンバーは?
  • プロジェクトオーナーは?
  • プロジェクトを手伝ってくれる人は?

4-3.プロジェクトで変化を強いられる人を想像する

相手の立場に立つとき、特に注意すべき人は、「プロジェクトによって変化を強いられる人」です。

人は変化を嫌うものです。プロジェクトの結果が会社にとってよいものだとしても、自分が変化を強いられると抵抗勢力になってしまう。

経済合理とは異なる思惑にまで、意識を広げることが必要です。

 

 

4-4.想像力でカオスプロジェクトのリスクを早期発見する

特に私が重視しているのが、リスクを発見し対処することです。プロジェクトマネジャーは、リスクの発見と対処だけできて、計画通りにすすめることさえできれば合格だと思います。「リスク発見すること」「どのリスクに対処すべきか見極めること」に必要なのが想像力です。
 
カオスなプロジェクトでは、リスクを全部洗い出すのは無理です。しかし、リスクを許容範囲内に抑えないとプロジェクトは破綻します。プロジェクトを破綻させないため、プロマネは、想像力を最大限に発揮する必要があります。