海老原の論理思考講師Blog

海老原一司Blog -論理思考講師×プロジェクトファシリテーター

営業フレームワークBANT活用6つのコツ

「あなたは商談で適切な営業質問ができていますか?」
「営業ヒアリングの基本の型を持っていますか?」

営業研修講師の海老原です。

筆者がヒアリングの最強営業フレームワークと考えているのが「BANT」です。商談で適切な営業質問をするには型を身につけるのが早道です。シンプルで覚えやすいBANTを営業の基本の型として身につけましょう。

営業ヒアリングの基本の型を持ては瞬時に適切な質問を選択し、商談成功確率を高められます。

※ 過去の筆者作成記事を基に大幅に加筆修正

1.営業フレームワークBANTとは

BANT(バント)とは、Budget,Authority,Needs,Time frameの頭文字をとった略語で、「予算」「決裁権」「ニーズ」「導入時期」の4つの営業質問項目です。BANTは、シンプルかつ汎用的な営業フレームワークです。

  • Budget(BANTのB):今回の商談の予算
  • Authority(BANTのA:決裁権限者、承認のポイント
  • Needs(BANTのN):顧客ニーズ(誰のどんなニーズか?どのくらい強いか?)
  • Timeframe(BANTのT):導入時期、検討時期、承認時期など購買プロセスでポイントとなる時期

BANTは、適切な営業活動をするうえでの必須情報です。BANT情報のうち1つでも漏れがあると商談が不利になります。この機会にBANTをフレームワークとして頭にたたき込みましょう。

1-1.BANTの予算とは

営業フレームワークBANTの1つ目は、Budget=予算です。BANTの予算では次の内容を確認します。

  • どの程度の購買予算金額を想定しているか?
  • 予算確保の目処はあるのか?
  • 予算金額確保目処の確からしさはどの程度か?
BANTの予算
BANTの予算

 

「予算質問くらい営業活動の基本だろう」と思うかもしれません。しかし、BANTの予算は、営業質問スキル次第で得られる情報の質が大きく変わります。

顧客担当者の最初の回答だけで予算額を判断しては、商談の最後に苦労することになります。
例えば、商談の受注直前で突然、大幅な値引きを依頼されたことがある営業担当者は多いでしょう。これは顧客担当者の上司に対する調整ミスです。
営業はBANT情報の「予算確保目処の確からしさ」の確認が弱かったのです。

 

1-2.BANTの決裁権とは

営業フレームワークBANTの2つ目は、Authority=決裁権です。

BANTの決裁権とは、商談での次の状況を確認します。

  • 今回の商談金額で、最終決裁者は誰か?
  • 最終決裁者の判断基準は何か? 普段の基準は?今回は?
  • 承認過程で、方針に影響を与えたり、最終決裁者に上がる前に止める人物はいないか? いるとしたら、どんな影響を与えるか?
BANTの決裁権
BANTの決裁権

 

BANTのAuthorityの解釈としては「決裁権限者」と、顧客企業の特定の人物だけを指す場合もあります。しかし、筆者は、決裁権限者=最終決裁者だけでなく、購買プロセスを把握し購買意思決定の流れ全体像を把握すべきです。

最終決裁者とは

BANTで把握すべきは「最終決裁者」です。最終決裁者は、その名の通り最後の意思決定をする人、この人がOKを出せば購買契約が成立する人です。


BANTヒアリングでは、最終決裁者と顧客担当窓口との役職階層が離れているほど、最終決裁者の意向を掴むことが重要です。大きな商談では「役員決裁になるので、稟議書を作成した顧客担当者が、最終決裁者に会うことは年に数回しかない」ということも珍しくありません。

多くの営業担当者は、商談のクロージング間際で、顧客の購買判断が急に変わって失注になった経験があるでしょう。商談終盤での失注原因の多くは、顧客窓口担当者と最終決裁者のコミュニケーションギャップ、認識のズレにあります。

BANTの最終決裁者の意向は必ず確認すべきです。最終決裁者に直接会うのはなかなか難しい場合も多いでしょう。しかし、直接会わずとも案件に対してどんな見解を持っているか?過去の商談からどんなポイントを重視して意思決定するか?を掴むことは可能です。最終決裁者の意向は複数の経路から多面的に確認しましょう。

暗黙の権限委譲が起きるとき

BANTでは、最終決裁者の意向さえ掴めれば安心な訳ではありません。役職が上がれば多くの稟議承認案件が上がってきます。役員クラスなら毎月数百件の稟議決済をしていることもザラです。

よって、顧客企業内で権限強い方、最終決裁者になるほどチェック仕切れない数の決裁待ち稟議を抱えています。このとき暗黙の権限委譲が起きます。


例えば、「この部下の稟議はいつもポイントを押さえていて任せても問題ない。今回も承認してもよいだろう」という思考です。この場合、BANTで掴むべきは、最終決裁者より実質的に権限委譲された部下の意向です。

BANTの決裁権は、「最終決裁者」と「実質的に権限を持っている人、最終決裁者に最も影響を与える人は誰か?」の2つの把握が重要です。

1-3.BANTのニーズとは

営業フレームワークBANT情報の3つ目は、Needs=顧客ニーズです。今回の商談において、次の内容を把握します。

  • 何に対するニーズか?
  • 誰にとってのニーズか?
  • ニーズは確かにあるか?
  • ニーズは強いか?
BANTのニーズ(Needs)
BANTのニーズ(Needs)

①何に対するニーズか?

顧客ニーズらしきものを見つけたら、まずは営業質問で明確化・具体化します。顧客は意外とニーズをしっかり言語化できないことも多いです。

②誰にとってのニーズか?

次に営業質問で誰にとってのニーズかを確認します。同じ物事でも、誰の立場に立つかで課題の種類、大きさが変わってきます。

例えば、「担当者個人ニーズがわかったが、組織ニーズと合致していなかった」というのはよくある失敗です。BtoB営業では、組織の経済合理的メリットが必要です。

③ニーズは確かにあるか?

3つ目は営業質問で「ニーズの確からしさ」を確認します。顧客担当者が「ニーズがある」といえば必ずあるように思えます。しかし、実際には当初言われたニーズがないこともよく起きます。
顧客担当者のいうニーズは顧客企業の課題仮説です。仮説ですから外れることもあります。仮説の根拠がどこまで強いかの確認が必要です。

④ニーズは強いか?

最後はニーズの強さです。言い換えれば、「顧客がどれだけ困っているか?」です。
ニーズが明確で確実にあるのに商談が立ち消えになった。これはニーズが弱かった、顧客がそれほど困っていなかったのです。

なお、BtoB営業では、基本的にニーズの強さは金額に言い換えられるべきです。基本的には、金額換算した効果が高いほどニーズが強いと言って良いでしょう。

1-4.BANTの導入時期とは

営業フレームワークBANT情報の4つ目は、Timeframe=導入時期です。

BANTのタイムフレームでは、今回の商談で次の内容を把握します。

  • 導入時期はいつか?
  • 導入時期から逆算して商談スタートから商談決定全体のスケジュールはどうなるか?
  • 全体スケジュールのうち主要なマイルストーン(クリアしないと次に進めない中間地点)は何か?
  • それぞれのマイルストーンはいつか?
  • マイルストーンでキーとなる顧客メンバーは誰か?
  • マイルストーンをクリアするために自社はどんなスケジュールで動くべきか?
BANTの導入時期(Timeframe)
BANTの導入時期(Timeframe)

時間軸は顧客の購買検討プロセスで把握する

Timeframeは導入時期と訳しました。しかし、BANTのTimeframeを日本語の「導入時期」とだけ捉えていては不十分です。

日本語で「導入時期」はある1点の時期を示します。例えば9月導入予定などです。一方、BANTのTimeframeは時間の幅があります。商談がスタートしてから商談終了までの時間の流れがどのように進むのか。これがタイムフレームです。

BANTのTimeframeは、顧客購買検討プロセスを幅を持った期間・流れとしてします。

例えば、次のようにプロセスごとの概算時期を把握します。

  1. 商品の基本情報収集:9月いっぱい
  2. 導入商品の要件決定:10月
  3. 導入商品の比較検討:11月
  4. テスト運用:12月前半
  5. 見積・稟議:12月後半

 購買検討プロセスを把握し、そのプロセスに沿ったアクションをとるのがBtoB営業の基本です。

2.営業フレームワークBANT活用6つのコツ

営業フレームワークBANT活用の6つのコツをまとめます。

2-1.営業フレームワークBANTのコツ①:予算を聴く順序に注意

営業フレームワークBANTのコツ。1つ目は、Budget(予算)ヒアリングの順番です。

概算予算は最初に把握

BANTの予算額は、商談で最初につかむべきです。予算額は営業ヒアリングの基本中の基本ともいえますが、意外としっかり確認されない項目です。
BANT情報で重要なのは早い時点から予算概算を確認すること。概算とは10万円か、100万円か、1000万円か、という金額の桁感です。

BANT情報の予算額が変われば営業質問が変わる

BANT情報の予算額が大きく変われば、連動して「決裁権限の段階」「ニーズの幅」「スケジュール感」などBANTの他の項目も変わってきます。
予算100万円のBANTヒアリングと、予算1000万円のANTヒアリングは別物と考えるべきです。

「Budget」が変われば「Authority、Needs、Timeframe」も変わる

BANT】 【金額小】 金額中】 金額大】
Budget(予算) 10万円 100万円 1000万円
Authority(権限) 課長決裁 部長決裁 役員決裁
Needs(必要性) 課長の課題 部の課題 会社の課題
Timeframe(時期) 1ヶ月 3ヶ月 6ヶ月
算額でBANT情報ヒアリング内容が変わる例

2-2.営業フレームワークBANTのコツ②:予算額の強い根拠を探す

営業フレームワークBANTのコツ。2つ目は、Budget(予算)の根拠です。
BANT情報の予算額が確認できたら、その根拠の強さを見極めます。

例えば、顧客の言った金額で提案をしたのに、結局予算が取れずに商談が頓挫したり、最後に大幅な値引きを求めらたりしたことがないでしょうか。
多くの場合営業担当者がBANT情報の算額の根拠の強さの確認が弱いことが原因です。

BANT情報の予算額根拠で注意すべき1つ目は、顧客窓口担当者が言っているだけ、という場合です。
上司の決済権限者の意向を確認せず、期待だけで予算額を言っている窓口担当者も多いものです。上司は、どう思っているのか? 過去に同等の内容で予算が降りたときはあるのか?などの確認が必要です。

BANT情報の予算額根拠で注意すべき2つ目は、そもそも予算をとっていない場合です。予算額を確認したときに、「見積もりをみて考えます」といったはぐらかすような答えがあったら要注意です。単なる情報収集の場合も多いです。
このような、まだ商談になっていない情報収集ステータスの顧客に対して、膨大な時間をかけ提案書を作ってしまう営業をよくみかけます。

BANT情報で、しっかりした案件の見極めができれば、営業活動の無駄もありません。

2-3.営業フレームワークBANTのコツ③:決裁権は集合体で考える

営業フレームワークBANTのコツ。3つ目は、Authority(権限)の捉え方です。
BtoBとBtoCでは購買意思決定が異なります。最大の違いは購買意思決定を組織(集合体)としてするか、個人でするか、です。

BANTの決裁権は、顧客企業を人の意思決定関与者の集合体(ユニット)と捉え関係者を洗い出しましょう。

DMU:BANTの決裁権整理に使えるマーケティングフレームワーク

BANTの決裁権を洗い出すのに使えるフレームワークがDMU(Decision Making Unit)です。DMUをより深く知りたい方は次の記事を参照ください。

製造業工場のDMUマップ例
製造業工場のDMUマップ例

▶▶記事リンク:『DMUとは:法人顧客の意思決定関与者を見える化する』

稟議書承認フローを把握する

BANTの決裁権限を理解することは、「稟議書の承認フローと承認権限を把握すること」とほぼイコールと思って良いでしょう。
BANTヒアリングで、最終決裁権限者が誰かだけに、注力する営業パーソンも多いです。しかし、特に大きな商談では、顧客意思決定メカニズム全体を理解するようにしましょう。最終決定は意思決定の集合体です。

2-4.営業フレームワークBANTのコツ④:まず稟議起案者を押さえる

営業フレームワークBANTのコツ。4つ目は、Authority(権限)のキーマンの考え方です。
BANT情報で最初に知りたいのが、「稟議起案者」です。より具体的には、「顧客が社内稟議を通すための稟議書を書く主体は誰か?」です。
BANT情報の決裁権で、最終決裁権限者の把握は重要です。しかし、稟議起案者を探すのが先決です。

商談成立とは、顧客企業の最終決裁者が稟議を承認することです。これを起案者からみると、顧客の稟議起案者が、最終承認に必要十分な材料を揃えることです。
営業担当者の仕事は、起案者に「これなら稟議が通る」と思える情報を提供すること。BANT情報の起案者を把握してはじめて、営業が始まります。

BANTの決裁権でわかりにくい「稟議起案者」

BANTの決裁権で、稟議起案者を最初に把握すべきと書きました。窓口担当者が稟議起案者でない場合も多いのです。
例えば、中堅社員のAさんが稟議起案者。しかし、Aさんの後輩のBさんが情報収集のため1人でコンタクトしてきた。この商談では、稟議起案者のAさんに会うこと、最低でもAさんの意向把握が必要です。

後輩のBさんは商談に対して特段の自分の意思を持たずに単にAさんの手足として動いているだけかもしれません。このとき、Bさんに聞いたニーズだけを元に提案すると失敗する可能性が高いです。

2-5.営業フレームワークBANTのコツ⑤:決裁権ヒアリングテクニック

BANTの決裁権=意思決定関与者は、顧客側からあえて情報を伝えてくることはほとんどありません。営業側から仕掛けてヒアリングする必要があります。

BANT情報の引き出し方は、面談の流れに沿って「次はどうなりますか?」という聞き方がスムースです。

「この次のステップはどうなりますか?」
「部長に報告して部長判断ですね」
「●●部の部長は、××さんでしたね?」
「そうです」
「他に事前にお話を伺ったりするする方はいらっしゃらないのですか?」
「そうですね。技術部の▲▲課長は決定前に確認したがると思います。」

2-6.営業フレームワークBANTのコツ⑥:ニーズとウォンツを区別する

ニーズと混同しやすい言葉がウォンツです。ニーズとウォンツを区別するためのコツは、目的と手段の関係で考えることです。

例えば、顧客が「営業支援システムを導入したい」といったとします。これはニーズ、ウォンツのどちらでしょうか。営業支援システムは手段、ウォンツです。それに対し、「営業活動を効率的に行いたい」「売上を上げたい」などが目的、ニーズになります。

ニーズとウォンツ

ニーズとウォンツの区別が重要な理由

BANTヒアリングにおいて、なぜニーズとウォンツの区別が重要なのでしょうか。それは顧客の発言は常にウォンツ寄りだからです。手段であるウォンツは具体的で目に見えやすいもの。一方、目的あるニーズは抽象的なものです。

ヒトは抽象的な事柄より具体的なことの方がずっと話しやすいものです。よって、顧客が話す内容は自然とウォンツ、手段がほとんどになります。よって、営業担当者がニーズを把握するためには、「そのウォンツでどんな目的を実現したいか?」を確認します。

(文責:プロジェクトファシリテーターロジカルシンキング講師 海老原一司)

ロジカルシンキング講師のビジネスナレッジ」サイト

project-facilitator.com

 

 

 

『誤解学』誤解なく伝わる論理的な文章の書き方

「渋滞学」で有名な東大教授西成活裕さんの本です。
西成さんは、理系中の理系、工学系の科学者です。「誤解学」と聞くと、ふつうに考えると文系の話題に思えます。誤解学という言語学、コミュニケーション学が主体となりそうな題材を一貫して理系の切り口で扱っているのが面白いところです。

論理的な文章を書くには、誤解の仕組みを理解し誤解をなくすことがとても有効です。

 

「誤解学」とは

誤解学とは、工学系の科学者が、誤解という言語学領域について論理的に研究した本です。

西成さんは、交通渋滞のメカニズムをモデリングにより分析した渋滞学で有名な科学者です。
「誤解学」では、理系中の理系、科学者っぽく、誤解のメカニズムをモデリング手法で分析を試みています。

誤解学からの学び

ロジカルシンキング講師として、年100本くらいの文章を個別添削している身としては、誤解を防ぐ方法が、かなり印象に残りました。気に入ったので、ロジカルシンキング研修のテキストに参考解説として加えています。

誤解が生じる最大の原因は、省略

ロジカルシンキング講師として、印象に残ったのは「誤解が生じる原因で最大なものは『省略』にある」という一文。

論理的文章のコツ:誤解を防ぐための省略と無駄の違い

  • 文章では、省略は減らす、無駄は削る。
  • 削っても情報量が変わらないのは無駄。情報量が減るのは省略

「情報量が多い」とは、曖昧さを減らすこと

論理思考講師として、印象に残ったもう一つは、20世紀初頭の電気工学者兼数学者のクロード・シャノンによる情報量の定義の話です。

シャノンの情報量の定義

「情報量は、情報を受けとったことで曖昧さが、どの程度減ったか」をもって計ることができる。

つまり、誤解を防ぐには、相手の持つ曖昧さを減らすこと。曖昧さを減らすことは、相手に多くの情報量を渡すことと同義。ということです。

1948年ベル研究所在勤中に論文「通信の数学的理論」を発表し、それまで曖昧な概念だった「情報」(information)について定量的に扱えるように定義し、情報についての理論(情報理論)という新たな数学的理論を創始した。

翌年書籍『通信の数学的理論』で、シャノンは通信におけるさまざまな基本問題を取り扱うために、エントロピーの概念を導入した。情報の量(情報量)を事象の起こる確率(生起確率)によって定義し、エントロピー(平均情報量)を数式で定義した。

そして、ノイズ(雑音)がない通信路で効率よく情報を伝送するための符号化(「情報源符号化定理」または「シャノンの第一基本定理」)と、ノイズがある通信路で正確に情報を伝送するための誤り訂正符号(「通信路符号化定理」または「シャノンの第二基本定理」)という現在のデータ伝送での最も重要な概念を導入した。

これらの定理は現在、携帯電話などでの通信技術の基礎理論となっており、情報技術の急速な発展に結びついている。

Wikipedia

誤解なく伝わる論理的な文章の書き方

誤解学の学びから誤解なく伝わる論理的な文章の書き方について考えます。

受け手の曖昧さを減らす文章を書く

一つ目は、情報の受け手の曖昧さを減らす文章を書くことです。具体例で考えてみましょう。

  1. 「昨日打合せの件、ご確認ください」
  2. 「昨日打ち合わせたA部財務シミュレーションの件、2パターン作成しました。どちらを選ぶか確認ください。オススメは1です」

1と2を比べた場合、2の方が情報量が多く、受け手の曖昧さが減ることは明らかでしょう。しかし、1のような情報量が少ない文章、受け取った相手の曖昧さが減らない文章はよくメールで受け取っていないでしょうか。

文字が多いと情報量が多いは違う

誤解なく伝わる論理的な文章を書くために、勘違いしてほしくないことがあります。「曖昧さを減らすためには文字数を多くすれば良い」という誤解です。次の文章を見てください。

「先日の件まとめました。遅くなって申し訳ありません。お手数ですが、ご確認いただけますようよろしくお願いいたします。」

この文章は全部で55文字。しかしほぼ何も言っていないに等しい文章です。

誤解なく伝わる論理的な文章は文字数ではなく中身が重要です。受け手の曖昧さを減らす情報密度の高い文章を書きましょう。

誤解生む省略をしない

例えば、同じ状況で上司にメールするとき次の4つの文章が考えられます。

  1. あの件、資料にまとめました
  2. 昨日の打合せの件、資料にまとめました。
  3. 昨日の打合せの件、来月会議資料のドラフトとしてまとめました。
  4. 昨日の打合せの件、来月会議資料のドラフトとしてまとめました。プレゼンの流れを確認の上ご意見ください。

あとになるほど、省略が減り受け手が誤解する可能性が低くなる文章になっています。

書き手の本意が「4.昨日の打合せの件、来月会議資料のドラフトとしてまとめました。プレゼンの流れを確認の上ご意見ください。」としたら、「1.あの件、資料にまとめました。」と伝えるだけでは誤解が生じる可能性大なのは明らかでしょう。

誤解が生じる3大用語

ビジネスメールで日常的に多く使われ、かつ誤解を生む可能性の高い3つの用語があります。

  • 確認(ご確認ください)
  • 検討(ご検討ください)
  • 相談(ご相談です)

「検討」「確認」「相談」。この3つは非常に解釈余地が広い言葉です。解釈余地が広いということは、相手が誤解する、自分の意図と異なる解釈可能性が高くなります。

私が講師を行うロジカルシンキング研修では、メール課題にこの3つが入ると必ずより具体的な意図を確認します。

例えば「確認ください」であれば「情報共有」なのか、「チェックしてフィードバックが欲しい」のか。フィードバックが欲しいのであれば、どこなのか、あるいはどういう視点でチェックして欲しいのか。

意図を確認したうえで、誤解のない文章に修正していきます。

「誤解なく伝わる論理的な文章の書き方」が重要な理由

私はロジカルシンキング研修で「論理的な文章の書き方」を指導しています。その中で、なぜ誤解なく伝わることを重視しているのでしょうか。

論理的な文章を書く上で誤解があると致命的

論理的な文章、わかりやすい文章を書くよう指導していますが、ここで誤解があると致命的です。伝わりやすい、納得しやすい文章を書いても誤解が生じれば台無しになってしまいます。

文章の誤解はなかなか気づけない

私が誤解についての理解が重要と思う点が、文章の誤解はなかなか気づかない、ということです。口頭でも誤解は生じますが、対話によってその場で修正しやすい。

一方、文章、例えばビジネスメールの場合、誤解が生じるのは「相手がメールを読んだとき」です。このとき書き手は読み手の状況を実際にみることができないため、誤解が生じたかどうかわかりません。

例えば、ビジネスメールを書いて、何らかの誤解により相手から返信がこなかったとしましょう。このとき、意図が伝わったのに返信がなかったのか、誤解が生じたのかを区別することは至難の技です。また、誤解があったとして、どのように誤解したかはもっと難しいでしょう。

このように文章による誤解は、長時間気付かれない傾向があります。誤解に気付くのが遅れるほどビジネスに与えるマイナス影響が大きくなります。

誤解なく伝わる論理的な文章の書き方ができると

誤解なく伝わる論理的な文章の書き方ができると何が起こるでしょうか。

メールの数が減る

まず、メールの数が減ります。理想は1つの要件に対して書き手、受け手1通ずつです。同じ要件に対して何度もメールのやりとりをすることはありませんか。誤解のなく伝わる文章が書ければメールの数が大幅に減ります。

メールの数が減ると何がおこるでしょう。

まず、仕事が速くなります。情報伝達にかける時間が減らせるでしょう。
もう一つは、仕事が早くなります。「速い」は仕事のスピード向上ですが、「早い」は仕事が前倒しでできる、短い期間できることです。例えば1回のやりとりに1週間かかるとしたら、一発で要件が伝われれば1週間。3回やりとりしたら3倍の期間になります。

誤解がなく伝われば手戻りがない

誤解がない情報伝達ができれば仕事の手戻りがなくなります。

仕事の手戻りの多くは、仕事の目的、成果物イメージなどの誤解にあります。仕事に対する上司の期待値と部下の認識のギャップが典型的です。

この認識ギャップがわかるのがあとになればなるほど、手戻りが大きくなります。手戻りがないかどうかで、業務効率が大幅に変わります。

また、誤解を最小化していつも手戻りがない状態が作れれば、常に前向きな仕事に時間を使えます。ポジティブに仕事に取り込めることは、個人にとっても、組織全体の生産性を上げるためにも重要でしょう。

相手の時間を奪わない

「相手の時間を奪わない」は、私が誤解のない論理的な文章を書く上で意識していることです。ロジカルシンキング研修受講者にも、この視点を持って欲しいと伝えています。

Aさんが書き手として、省略が多く誤解が生じやすいビジネスメールを書きました。このときAさんは忙しかったのでメールにかける時間がなかったのです。多少メールがわかりにくくても仕方がない、送信してしまおうと考えました。

このときAさんは多少時間を節約して楽になったかもしれません。しかし、メールの受け手は、わかりにくいメールを読むために「余計に」時間を使うことになります。

つまりわかりにくいあなたのメールが相手の時間を奪うことがあるのです。相手の時間を不必要に奪わないことは相手への礼儀であると考えます。

【書籍】『誤解学』紹介

 誤解学は、新潮選書から発売されています。

誤解学は、「誤解」という論理学やコミュニケーション論のごく一部となりそうな狭いトピックを、誤解単体で学問体系として扱っている唯一の本ではないかと思います。

誤解学(新潮選書)

(文責:プロジェクトファシリテーター 海老原 一司)

 

(元記事)

project-facilitator.com

 

BtoB営業が必ず知っておくべき基本フレームワーク4選

営業研修講師の海老原です。

BtoB営業が現場で使える基本フレームワーク4選を厳選して解説します。

BtoB営業が必ず知っておくべき4つの基本フレームワークとは

 

4つのBtoB営業基本フレームワークが「BANT」「DMUマップ」「FABE分析」「3C分析」です。

4つのBtoBマーケティングフレームワーク

情報収集フェーズで「何を聞くか」のフレームワークがBANT。その後の提案フェーズ「何を提案するか」に使えるフレームワークがFABEです。

DMUマップと3Cは、商談全体を通して、「どこから情報を得るべきか」「どの視点で解釈するか」を考えるための視点・地図として利用できます。

  • BANT(バント):Budget,Authority,Needs,Timeframeの頭文字をとった略語です。「予算」「決裁権」「ニーズ」「導入時期」の4つの質問の切り口を示す営業フレームワーク
  • DMU:Decision Making Unitの頭文字を取った略語です。顧客の意思決定単位=顧客の意思決定者、または意思決定関与者を構造的に把握するための営業フレームワーク
  • FABE分析(ファベ):FABEとは、Feature、Advantage、Benefit、Evidenceの頭文字をとった略語です。FABE分析は、提案のコンセプトや訴求方法の分析に使える営業フレームワーク

BANT:営業ヒアリング基本フレームワーク

BtoB営業の商談ステップは、大きく2つにわけると「情報収集」と「提案」に分けられます。情報収集フェーズの営業フレームワークが、BANT(バント)です。

Budget(予算)のヒアリング

  • 営業商談の予算額は、いくらか?
  • 予算は確保済みか? まだなら予算確保できそうか?
  • 誰が予算額を決めるか?

Needs(必要性)のヒアリング

  • どんなニーズか?
  • ニーズは確かにあるか?(個人見解ではなく、企業組織の目線みて合理的なニーズか?)
  • ニーズは強いか? その根拠は?(定量的に試算すること)

Timeframe(導入時期)のヒアリング

  • 導入時期はいつか?
  • 導入時期を含む、商談全体の検討スケジュールは?
  • 導入決定までのプロセスで顧客の誰が、いつ、何をするか?

FABE分析:営業提案基本フレームワーク

BtoB営業商談ステップは、大きく2つにわけると「情報収集」と「提案」に分けられます。

FABE(ファベ)は提案フェーズの営業フレームワークです。

FABE分析のF:営業提案の特徴

FABE分析のF、Feature は、提案や商品の特徴、概要説明です。提案概要を一言で説明します。1文、2文くらいの分量で端的にまとめます。

FABE分析のA:営業提案の優位性

FABE分析のA、Advantageは、競合(商品)に対する優位性です。「競合に対する」ですから競合を具体的にする必要があります。

例えば、マクドナルドの競合は、ファーストフードというカテゴリでは、モスバーガー、サブウェイなどが考えられます。あるいは、サラリーマンの昼食とすれば、コンビニ弁当なども競合になりえるでしょう。

モスバーガーに対する優位性とコンビニ弁当に対する優位性は、表現が異なってくるはずです。

FABE分析のB:営業提案の顧客便益

例えば、「とても小さい」は、商品の特徴ではありますが、直接顧客メリットを表現していません。例えば「(とても小さいので)ズボンのポケットに入ります」は、顧客メリットを表現してます。
前アップルCEOの故スティーブ・ジョブズは、iPod発売の伝説的なプレゼンテーションで「スボンのポケットに1000曲入る」という顧客メリットを訴求しました。

FABEのE:営業提案の証拠

FABE分析のE、Evidenceは、裏付けとなる情報です。AdvantageやBenefitを根拠づける証拠です。

例えば、「政府統計」「科学的な実験データ」「専門家のコメント」などは証拠となります。

営業提案のEvidence(証拠)は2つの使い方があります。Advantage(優位性)に対するEvidenceとBenefit(顧客メリット)に対するEvidenceです。

文章なら次のような表現になります。

「この商品の優位性は、●●の性能が優れいてることです。具体的には、」

「この商品にはこのような顧客メリットがあります。例えば、」

DMUマップ:顧客理解基本フレームワーク

DMUマップは、情報収集から提案まで、商談プロセス全体を通して使う営業フレームワークです。

DMUマップは、顧客を理解し商談を進める上で「誰から情報収集するか?」「誰に向けて提案するか?」を考えるための地図として使えます。

DMUマップ活用事例

DMUマップで、顧客の意思決定構造を分析した例を示します。

製造業工場のDMUマップ

こちらは、製造業の工場のDMUマップです。この場合、顧客企業は工場を複数持っています。そして、工場ごとに「生産技術部」「製造部」「購買部」という3つの組織を持っています。

DMUマップの使い方

DMUマップで、「各意思決定関与者の関心事はなにか?」「どのように意思決定に影響を及ぼすか?」「意思決定に及び素影響力はどのくらいか?」「自社に対する態度は?」など、全体像を構造的に把握します。

DMUマップは、関係者の全体像を視野を広げて網羅的にみるためにも有効です。例えば、営業研修でDMUマップ作成ワークがあります。その後顧客ニーズについて質問すると、「思ったよりお客様のことを分かってなかった。会うべきなのに会っていない人がいた」という声が多く聞かれます。一人で営業活動しているとどうしても視野が狭くなるのです。

DMUマップの書き方

DMUマップの書き方は様々です。

まずは事例のようにシンプルな組織構造を把握しましょう。その際、部署単位だけでなく、1人1人誰がいるかを氏名・役職まで把握することが重要です。

特に購買意思決定に影響しそうな人物は必ず確認します。例えば、事例では製造部の「班長」は、工場の意思決定に関わるようなので、重要人物として把握します。

3C分析:商談の営業戦略検討基本フレームワーク

3C分析はマーケティングで有名なフレームワークです。

3C分析は、商談を取り巻く環境分析にも有効です。営業戦略を検討するために3C分析の顧客、競合、自社3つの視点で網羅的に検討し商談戦略の質を高めます。

営業フレームワークとしての3C分析

3C分析では、Customer(市場・顧客) Competitor(競合) Company(自社)の3つの視点で業界環境分析を行います。

3C分析の3者は業界だけなく商談分析のプレーヤーとも一致します。

  • Customer:本商談での顧客の状況は? 目的は?予算は?期間は?
  • Competitor:本商談での競合は誰か? どんな提案をしているか? いくらで提案しているか? 強み・弱みは何か?
  • Company:自社と顧客の関係は? 競合に比べた強み・弱みは?

Costomer:商談中の顧客

業界を対象に3C分析を行う場合、Costomerは市場・顧客と解釈します。

営業商談での3C分析のCostomerは顧客、しかも商談相手の顧客1社のことです。

顧客情報を詳細に得るには、BANTなどのフレームワークを使います。

3C分析では、BANTで得た顧客情報と競合情報や自社情報を比較します。このようにフレームワークを組み合わせて使うことが有用です。

Competitor:商談を争う競合他社

通常の3C分析では、業界全体での競合を想定します。

商談で3C分析を使う場合は、この商談を争う競合他社に絞って分析します。

商談の競合分析で最初におこなうべきこと

商談の競合分析において、はじめにすべきことは何でしょう。

「この商談を争う競合は何社あるか?」「その競合は、どこか?」を顧客からヒアリングすることです。まずは、敵を知る必要があります。

商談の3C分析で犯しがちなミスが、提案最終段階になって競合調査を始めることです。提案の最終段階で競合情報がわかっても、大抵手の打ちようがありません。

 

最もありがちなのが、提案の差別化余地がない状況で競合との争いになり価格競争で疲弊するパターンです。

商談の早い段階から3Cという営業フレームワークを意識し、視野を広げて情報収集しておきましょう。

 

(元記事)

project-facilitator.com

 

Webライティングは最速マーケティング仮説検証方法

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マーケティング戦略

海老原です。

最近Webマーケティング支援をよく行っています。そこで、最近思うのは以下4点。

  • マーケティング戦略立案からWebマーケティング実行まで一気通貫でできる人が枯渇している
  • Webマーケティングで重要なのは仮説検証を素早く回すこと
  • Webの文章さえ書ければ、すぐ仮説検証ができる
  • マーケティング戦略を踏まえた文章が書ければ、戦略仮説検証も簡単

今回は、マーケティング戦略の仮説検証とWebライティングの関係について書きます。

 

 

1.Webマーケティングは伸びしろが大きい 

1-1.マーケティング戦略としてのWebサイト

ほとんどすべての会社がWebサイトを開設していると思います。また、うちはWebサイトに力を入れている、企業も多いでしょう。しかし、マーケティング戦略を実行するためのツールとして、マーケティング戦略を踏まえたWebサイトの構築・改善を行っている企業はどのくらいあるでしょうか。

ほとんど無いといういうのは私の感覚です。つまり、多くの企業では、マーケティング戦略とWebサイト構築は全く連動していません。

 

1-2.マーケティング戦略がWebサイトに反映されない理由

これまで私は曲がりなりにもマーケティング戦略をダイレクトにWebサイトに反映させてきたつもりです。しかし、なぜ世の中では、マーケティング戦略とWebサイト構築に断絶が起きているのか。Webマーケティングの専門家やWebサイトを利用している企業にヒアリングした結果、理由が見えてきました。

理由は単純で「マーケティング戦略を考える人」と「Webサイトを構築する人」と「Webコンテンツを作る人」が分かれているからです。

まず、上位のマーケティング戦略を考える事業担当者、マーケティング責任者がいます。この人たちは、通常Webサイト構築は専門外なので、Webプロデューサーにサイト構築を依頼します。そして、Webプロデューサーは、デザイナー、エンジニア、ライターを使ってWebサイト構築のディレクションを行います。

マーケティング戦略立案から実行まで、役割ごとにプライヤーが分かれている。また、Webマーケティング、Web技術は進化のスピードが速いため、Webの世界では、どんどんスペシャリスト化が進んでいます。そのため、マーケティング戦略立案から実行まで、トータルで見れる人がいないのです。

 

 

 

 

 

2.文章力があれば仮説検証がすぐできる

 2-1.戦略とは仮説である

マーケティング戦略に限りませんが、「戦略とは仮説である」と言われます。絶対確実な戦略はあり得ません。あくまで仮説、仮の説明です。とすると、戦略は検証させる必要があります。

戦略は、仮説検証を繰り返して、強化していくものです。

 

 

 

3.マーケターが文章力を身につけるには

 

 

カオスプロジェクトのPDCAを回すコツ

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カオス状態


海老原です。

20年間新規事業中心にカオスプロジェクトのプロマネをやってきました。プロジェクトを回すには、PDCAが重要です。しかし、実際PDCAをうまく回せているプロマネはほとんどいないものです。

ましてや、不確実性の高いカオスプロジェクトは、PDCAを回すことが、さらに難しくなります。そんな、カオスプロジェクトのPDCAを回すコツについて考えてみました。

 

1.PDCAとは

1-1.PDCA

改めてPDCAとは何でしょう。

  • Plan:業務計画を作成
  • Do:計画に沿って業務実行
  • Check:業務実行が計画に沿っているか評価
  • Act:実行が計画に沿っていない部分を調べ改善

 

計画し実行する。その後実行結果をみて改善、実行することです。なお、Actionは、「改善の実行」の場合と「改善した計画(Plan)の実行」の2つのとり方がありえます。

 

1-2.PDCAサイクル

Wikipediaから「PDCAサイクル」の定義を引用します。

 

PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などで、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する手法です。
※Wikipediaより
 
 

ここで注意したいのは「PDCAサイクル」「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する手法」の2つでしょう。

つまり、PDCAは、単体のアクションではない。継続的に繰り返して改善する活動である」ということです。

 

 

2.PDCAはもう古い?

 

2-1.Pはいらない?

最近「変化の激しい今の時代、PDCAは古い。Planを作っている時間はない、まずは実行だ」といった主旨の意見をよく聞きます。「PDCAは終わった。これからはOODAだ」もほぼ同様です。

しかし、私は、プランを立てることは、絶対に重要だと思っています。PlanのないPDCAはない。ただし、Planの作り方、回し方に工夫がいると思います。

 

なお、OODAループとは、Observe(観察)、Orient(状況判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字をとったものです。平易にいうとわかりやすくいうと「みる」「わかる」「きめる」「うごく」という意味になります。

2-2.PlanなきPDCAサイクルは、無意味

Planの定義しだいですが、私はPlanがなければPDCAサイクルは回らない。PlanのないPDCAは意味がないと考えています。

なぜか、それは改善すべき目的・目標が曖昧だからです。

 

PDCAの基本は改善です。改善に最低限必要なのは、目的や改善指標です。あるプロジェクトがあって、PDCAを回すには、そのプロジェクトで、ある作業にかかる時間を短縮する、なにかを1日でできる回数を増やす、など何らかの改善したい指標、PDCAの判断軸が必要です。

Plan不要といっている人の多くが、このPDCAを回す改善判断軸を持たずに、「とりあえず実行」していまします。これでは、何をCheckするのか?なんの改善Actionをとるのかが、わかりません。Planの時点で最低限何をCheckし、何を改善するためのActionを取るかをイメージしておかないと、PDCAサイクルにならないのです。

 

 

3. カオスプロジェクト

 3-1. カオスプロジェクトとは

どんなプロジェクトでも大なり小なり混乱はつきものです。しかし、プロジェクトスタート前、プロジェクト定義の時点から、必然的にカオスになる種類のプロジェクトをカオスプロジェクトと呼ぶことにします。

なお、ここでは、プロジェクトマネジャーのスキル不足でカオスに陥ってしまうプロジェクトは除きます。プロジェクトマネジャースキルなどに関係なく、プロジェクトの性質上カオス状態が運命づけられているプロジェクトのことです。

 

いろいろ定義の仕方はあり得ますが、私はシンプルに「誰もやったことがないプロジェクト」をカオスプロジェクトと呼びます。

なお、「誰もやったことがない」というのは、実務的には「社内で誰もやったことがないプロジェクト」と言い換えてもよいと思います。つまり、世界で誰かがやったことがある場合でも、相当整理されたノウハウが入手できない限りは、カオスプロジェクトになると思います。

 

 3-2. カオスプロジェクトの特徴

 カオスプロジェクトとは「誰もやったことがないプロジェクト」であると定義しました。例えば、わかりやすいのは「新規事業プロジェクト」でしょう。他にも業務改革プロジェクト、などが考えられそうです。

 カオスプロジェクトの特徴は何でしょう。私はカオスプロジェクトの最大の特徴は「プランが立てにくいこと」だと思います。プロジェクトスタート時点のプランがある程度ずれるのは当然です。しかし、カオスプロジェクトでは、あるタスクのボリューム・実行期間を読み誤るだけでなく、そもそもタスク存在自体を見誤ることが多いです。つまり、プラン時のタスク漏れリスクが非常に大きいのがカオスプロジェクトです。

 

 3-3. カオスプロジェクトのPDCA

 カオスプロジェクトの特徴は下記でした。

  • 誰もやったことがないためにプランが立てにくい
  • プランを立てたとしても、タスク漏れリスクが非常に大きい。

PDCAを考える上で、注目したいのは「プランが立てにくい」こと。「プランが立てられない」ではありません。プランが立てられるが非常に難しいのか、そもそもプランを立てられないのか、は大きな違いです。

プランを立てられないのであれば、当然PDCAにPlanはありません。しかし、プランを立てるのが非常に難しいときに、それでもプランを立てるか、あるいはプランを立てない手法をとるか。

私は、カオスプロジェクトにおいてもPDCAは有効という立場です。ただし、カオスプロジェクトならではのPDCAを回すためのコツはあると思います。

 

 

 

 【海老原Blog】 プロマネコラムまとめ

 

 

BtoB営業の顧客攻略地図-DMUマップとは

営業ヒアリング講師の海老原です。

BtoB営業で重要な概念がDMU(Decision Making Unit)です。「意思決定者」と訳されることも多いですが、私は「意思決定構造」「意思決定メカニズム」と捉えています。BtoB営業に必要なDMUマップの使い方事例を交えて紹介します。

 

1.なぜDMU Decision Making Unitなのか?

1-1.BtoBとBtoCの意思決定の違い「Unit」

まず、注目すべきは、DMUのU=Unit(単位、部隊、など)ということ。つまり、Unitとは、人の集合・組織のことです。

BtoCでは、多くの意思決定は消費者個人、つまり1人で行われます。しかし、BtoBでは、購買意思決定が組織単位で行われます。これが、BtoB営業がBtoCと大きく異なる部分です。

 

1-2.DMU=意思決定者でよいのか?

DMUを「意思決定者」、または「最終意思決定者」と訳す場合も多いです。これは、稟議を最終的に承認する個人、例えば、部長や本部長といった組織長をイメージします。

このDMUを一個人と考える捉え方は、BtoB営業として問題があるでしょうか。確かに、意思決定者は重要です。また、トップダウンの意思決定もあるでしょう。

しかし、多くの場合トップの最終権限者の意見だけで、意思決定がなされることはありません。大なり小なり、組織としての意思決定メカニズムが働くものです。例えば、どんなにトップの権限が強くても、トップの組織長が意思決定するための情報は、部下から上がってきます。

 そのため、企業をUnit=組織として考える必要があるのです。

 

 2.DMUマップで意思決定構造を掴む

2-1.DMUマップとは

DMUマップを作って、顧客の意思決定構造を分析した例を示します。

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製造業工場のDMUマップ事例

 

こちらは、製造業の工場のDMUマップです。この場合、工場ごとに「生産技術部」「製造部」「購買部」という3つの組織をがあります。

このように、まずDMUの全体像を把握します。そして、

  • 「各意思決定関与者の関心事はなにか?」
  • 「どのように意思決定に影響を及ぼすか?」
  • 「意思決定に及び素影響力はどのくらいか? 自社に対する態度は?」

などを把握していきます。

2-2.DMUマップに書くのは、組織でなく個人まで

DMUマップの書き方は様々ですが、まずは事例のようにシンプルな組織構造を把握しましょう。

その際、部署単位だけでなく、1人1人誰がいるかまで把握することが重要です。もちろん顧客従業員全員を把握する必要はありません。しかし、意思決定構造に影響しそうなキーマンは確認必要です。例えば、事例では製造部の「班長」は、工場の意思決定に関わるようなので、重要人物(キーマン)として把握します。

 

 

3.DMUマップで顧客攻略共通言語を作る

DMUマップは、基本的にBtoB営業が1社1社の顧客の意思決定構造を掴むために使います。

しかし、私はDMUをマップには、もう一段上の使い方があると考えています。それは、組織に顧客理解のための共通言語を作ることです。

DMUマップは、顧客ごと、場合によっては同じ顧客でも商品ごとによって異なるのが普通です。しかし、ターゲット顧客層がある程度絞れている商品・サービスでは、横展開可能な、DMUマップの標準テンプレートを作ることが可能です。

  

3-1.マンション組合の典型的DMUマップ

 私は、東邦レオ株式会社にて顧問を努めています。お客様である典型的マンション組合のDMUマップを作成しました。

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マンション組合のDMUマップ

マンション組合の意思決定に関わる主要プレイヤーです。

  • 理事会
  • 自治会
  • 修繕委員会
  • 植栽委員会
  • 植栽系クラブ(公式)
  • 植栽系クラブ(非公式)

 

 

3-2.標準テンプレートで全営業がDMUマップ作成

東邦レオでは、マンション組合のお客様を理解するために典型的なDMUマップテンプレートを作成。テンプレートを用いてお客様ごとにDMUマップを作っています。

 

DMUマップを1から作るのは、大変な作業です。しかし、標準テンプレートを使うことで、すべての営業担当者が、お客様のDMUマップを自分自身で作成できています。

マンション組合DMUマップという共通言語をつくることで、各営業担当はすばやくお客様を把握することができます。社内の連携やサポートもスムーズになりますし、顧客の引き継ぎも楽になります。

 

3-3.営業だけでなく現場作業者ともDMUマップで会話

 DMUマップは営業担当者が作成します。しかし、営業だけでなく、植栽管理作業の実務を行う、現場リーダーやクリエイターにもDMUマップを使って顧客情報を共有しています。つまり、事業に関わる全員がDMUマップという共通言語を使ってコミュニケーションできるようになっています。

 

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DMUマップを共通言語として現場と営業が会話

 

 

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営業ヒアリングを極めるBANT活用8つのコツ

営業ヒアリング研修講師の海老原です。

営業ヒアリングでは、ヒアリング項目の「型」を持っていると楽です。営業ヒアリングの基本かつ汎用的なフレームワークがBANTです。

 

0. BANTは営業ヒアリングの基本

 

BANT(バント)とは、「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(ニーズ)」「Timeframe(導入時期)」の4つの頭文字をとったものです。BANTの4つの項目について、それぞれ説明します。

0-1. BANT Budget(予算)

  • 商談の予算額は、いくらか?
  • 予算は確保済みか?予算は確保済みか? まだなら予算確保できそうか?誰が予算額を決めるか?

0-2. BANT Authority(決裁権)

  • 顧客担当者の決裁権限は?(特に予算金額)
  • 今回の最終決裁権限者は誰か?(予算稟議の最終承認者は?)
  • 決裁判断に直接・間接的に影響が大きいキーマンは誰か?また、キーマンの判断軸は何か?

0-3. BANT Needs(必要性)

  • どんな必要性か?必要性は確かにあるか?(個人意見ではなく、企業目線で本当に必要か?)
  • ニーズは強いか?その根拠は?(できるだけ、定量的に試算すること)

0-4. BANT Timeframe(導入時期)

  • 導入時期はいつか?(できれば全体の検討スケジュールプロセスを掴む)
  • 導入決定までのプロセスで顧客の誰が、いつ、何をするか?(ここを営業がサポート)

1.BANTのコツ1 Budget(予算)は最初に確認

1つ目のBANTのコツは、Budget(予算)ヒアリングの順番です。

予算のうち、まず確認するべきは、予算額です。営業ヒアリングの基本中の基本ともいえますが、意外としっかり確認されない項目です。

私が重要と思うのは、商談の早い時点から予算額の概算を確認すること。なぜなら、予算額によって、提案内容が異なるからです。また、提案内容が異なれば、営業ヒアリング内容も異なります。

商談の最後になって、予算額を聞く場面をよく見かけます。しかし、最後に予想予算額が大幅に異なればヒアリング失敗です。

ニーズヒアリングには、提案仮説を持つべきです。そして、提案には、予算仮説を持つべきです。予算仮説の検証は早めに行いましょう。

 

Budget(予算)次第で、聞くべきAuthority、Needs、Timeframeも変化

Budget(予算)

10万円

100万円

1000万円

Authority(権限)

課長決裁

部長決裁

役員決裁

Needs(必要性)

課長の課題

部の課題

会社の課題

Timeframe(時期)

1ヶ月

3ヶ月

6ヶ月

 

2.BANTのコツ2 予算の強い根拠を探す

2つ目のBANTのコツは、Budget(予算)の根拠です。

予算額が確認できたら、その根拠の強さを見極めます。例えば、顧客の言った予算通りの提案をしたのに、結局予算が取れずに商談が頓挫したり、最後に大幅な値引きを求めらたりしたことがないでしょうか。これは、多くの場合予算額の根拠の強さが確認できていないことが原因です。

注意すべき1つ目は、顧客窓口担当者が言っているだけ、という場合。上司の決済権限者の意向を確認せず、期待だけで予算額を言っている窓口担当者も多いものです。上司は、どう思っているのか? 過去に同等の内容で予算が降りたときはあるのか?などの確認が必要です。

2つ目は、そもそも予算を持っていない、予算をとっていない場合です。予算額を確認したときに、「見積もりをみて考えます」といったはぐらかすような答えがあったら要注意です。単なる情報収集で、そもそも商談になっていないことも多いです。このような、まだ商談になっていない情報収集ステータスの顧客に対して、膨大な時間をかけ提案書を作ってしまう営業をよくみかけます。しっかりした見極めが重要です。

 

 

 

 3.BANTのコツ3 稟議書の承認フローを把握

決裁権限を理解することは、日本企業では「稟議書の承認フローと承認権限を把握すること」とほぼイコールと思って良いでしょう。

最終決裁権限者が誰かだけに、注力する営業パーソンも多いようですが、特に大きな商談、普段と異なる商談では、顧客意思決定メカニズム全体を理解するようにしましょう。

 

4. BANTのコツ4 稟議起案者を押さえる

商談の最初に知りたいのが、「稟議起案者」です。より具体的には、顧客が社内で購買稟議を通すための稟議書を書く主体は誰か?ということです。

最終承認者も重要ですが、稟議起案者が先です。というのは、特に新規商談では、話している相手が稟議起案者でない場合も多いのです。

商談成立とは、言い換えれば、顧客の起案者が「これなら稟議が通る」と思える情報を提供すること。稟議起案者を把握するまでは、商談が始まっていないと思ったほうがよいでしょう。

例えば、中堅社員のAさんが稟議起案者。しかし、Aさんの後輩のBさんが情報収集のため1人でコンタクトしてきた。こんな場合は、Aさんに会うこと、最低でもAさんの状況把握が第一です。

  

5.BANTのコツ5 個人と組織ニーズを区別

営業ヒアリングで、把握すべきは「個人ニーズ」か「組織ニーズ」か。あえて言い切れば企業組織である限り、必ず組織ニーズが優先されます。
個人個人の思惑は重要です。しかし、BtoB営業で優先されるべきは、企業組織としてのニーズです。企業全体、あるいは1部門の場合もあるでしょう。いずれにせよ、個人の集合体としての組織の意思決定が重要です。

 

6.BANTのコツ6 ニーズはゼロイチで考えない

営業ヒアリングの典型的失敗の一つが、ニーズをゼロイチで考えてしまうこと。つまり、ニーズがあるか/ないか?だけで考えることです。

「できれば対応してほしい」といった細かな「弱いニーズ」にいくら対応しても時間がかかりますし、お客様には刺さりません。

必要なのは、たった一つでもよいので、「強いニーズ」を探すこと、強いニーズの課題解決をすることです。

 

1つの強いニーズ >> たくさんの弱いニーズ

 

  

7.BANTのコツ7 時間軸は、購買検討プロセスで把握

Timeframeとは、単純には商品・サービスの導入時期です。

ただ、BtoB営業としては導入時期はもちろん、導入までの購買決定プロセスを把握することが重要です。

例えば、以下のようにプロセスごとに概算時期を把握します。

  1. 商品の基本情報収集:9月いっぱい
  2. 導入商品の要件決定:10月
  3. 導入商品の比較検討:11月
  4. テスト運用:12月前半
  5. 見積・稟議:12月後半

 プロセスを把握し、そのプロセスに沿ったアクションをとるのがBtoB営業の基本です。

 

8.BANTのコツ8 「誰が」「いつ」「何を」まで把握

 購買検討プロセスの時間軸の次は各プロセスの登場人物を把握します。BtoB営業では、たくさんの登場人物がいて、キーマンがプロセスごとに移り変わります。例えば、

情報収集段階では、稟議起案をする担当者。要件詳細を詰めるときは技術部門。稟議では財務部門。など、キーマンの部門自体が変わることもしばしばです。

これを、DMU(意思決定構造)マップで把握します。

 

 9.BANT活用上級編

BANTでは、4つの項目をそれぞれ営業ヒアリングします。しかし、項目単体だけでなく、2つの項目の組み合わせ活用をすると、より決めの細かい営業ヒアリングができます。

9-1. Budget(予算)×Authority(決裁権)

営業ヒアリングでは、はじめにBANTの予算額を把握すべきと書きました。このとき、「Budget(予算)」と「Authority(決裁権)」をセットで確認したいところです。

決裁権限、言い換えると自分の権限内で稟議承認できる金額は、通常役職で変わります。

例えば、下記のように稟議書規程が定められています。

  1. 課長:決裁金額10万円まで
  2. 部長:決裁金額100万円まで
  3. 事業部長:決裁金額500万円まで

上記は、金額によって組織の階層が上がっているパターンです。

ときには、縦の動きだけでなく、横の動き、つまり他の部署が関わる場合があります。

例えば、「100万以上の稟議は、財務部を稟議承認者に追加すること」といった稟議書規程がある企業もあります。

 

 

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ソリューション営業のためのニーズヒアリングノウハウ

営業ヒアリング研修講師の海老原です。

ニーズヒアリング技術について、まとめていきます。少しずつ書き足していく予定です。

(2019/12/29現在)

 

1.ソリューション営業のニーズヒアリング

「御用聞き営業ではダメだ。ソリューション営業が必要だ」と言われます。ソリューション営業で最も重要なスキルの一つがニーズヒアリングです。

 

1-1.ソリューション営業のキモはニーズ把握

ソリューション営業とはなんでしょうか。「問題解決型の営業」「課題解決型の営業」という定義がシンプルな定義です。

ソリューション営業の商談ステップは、大きく分けると、顧客の問題、顧客課題を把握する「ニーズヒアリングフェーズ」。解決策を提案する「ソリューション提案フェーズ」の2つです。

 

特にソリューション営業にとって重要なのは、どちらでしょうか? 私は、ニーズヒアリングフェーズが重要と考えています。モノが溢れている現代、ソリューションの内容で強みを出すことは、ますます難しくなりつつあります。また、ソリューション営業はチーム営業です。つまり、営業は極端な話、ニーズヒアリングで課題把握さえできればOK。良い課題さえ発見できれば、解決策は他の人が考えてもよいのです。

営業とセールスエンジニアの関係を考えるとわかりやすいでしょう、

 

1-2.ニーズを掴めなければ営業はAIに代替される

 これからのAI時代に残る職種、無くなる職種は何か、と議論されています。営業という職種はどうでしょうか。

まず、特にBtoB営業において、ヒューマンスキルである顧客とリレーションとる機能は残るでしょう。いわゆる御用聞き営業のような、単に顧客要望を聴くだけの営業スタイルは、すでに価値がなくなってきています。

さらに、これからのAI時代では、既存ツールを組み合わせて解決するだけの、狭い意味のソリューションは価値がなくなってくると思います。過去に解決策があれば、AIは人間以上の正確さで適切なソリューションを提供してくれるはずです。

とすると、残るは課題設定、問題発見機能です。顧客の課題設定、問題発見を助けるために、必要なのが、ニーズヒアリング力です。

 

突き詰めれば、営業に必要なスキルは「ヒューマンスキル」と「ニーズヒアリング力」の2つに集約されるのではないでしょうか。

 

 

2.そもそもニーズとは(What)

ニーズヒアリングを考える上で、まずニーズとは何でしょうか。ニーズとウォンツの違い、BtoBのニーズについて考えます。

2-1.ニーズとは ーニーズとウォンツ

ニーズと関連する言葉で、ウォンツがあります。

前職のシナプスでは、ニーズは目的、ウォンツは手段と整理していました。例えば「腕時計がほしい」というウォンツを考えてみましょう。

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腕時計がほしい

「腕時計がほしい」というウォンツ(手段)に対するニーズ(目的)は、なんでしょうか。例えば、「時間を正確に知ることで、約束の時間に遅れたくない」というニーズ(目的)がありそうです。あるいは、情緒面に着目して「かっこいい腕時計がほしい。かっこよく見られたい」というニーズ(目的)も考えられます。

 

また、BtoB営業におけるニーズとは、相手が企業になりますので、企業目的や解決すべき企業課題ということになるでしょう。

 

2-2.人はまずニーズよりウォンツに注目する

人はまずニーズよりウォンツに注目します。答えはシンプルで、「ウォンツ/手段の方がニーズ/目的よりイメージしやすいから」です。

先ほどの腕時計の例では、腕時計というウォンツ、手段は、とても具体的でイメージしやすいモノです。しかし、「約束の時間に遅れたくない」というニーズ、目的は、抽象的で頭に描くことが困難です。もちろん、一度は目的を思い浮かべるでしょう。しかし、手段を考えているうちに、当初描いた目的は、どんどん薄れていくものです。よく手段が目的化している、と言われるのは、このことです。

そのため、意外と自分自身でもニーズはわからないものです。ニーズを発掘し、明確な形に整理することは、顧客にとって価値があります。顧客のニーズを把握する、顧客がニーズを明確にすることを助けるのがソリューション営業です。

 

2-3.BtoBのニーズは経済合理性で決まる

BtoB営業では、購入者は法人企業です。つまり、把握すべきニーズは、個人ニーズではなく組織ニーズです。この個人ニーズと組織ニーズの区別が重要です。

法人企業での判断軸は、基本は経済合理性です。経済合理性とは、突き詰めれば費用対効果、「購買意思決定したとき、課題解決のリターン額が、購買代金より大きいか」で決まります。

 

3.ニーズヒアリングとは(What)

ニーズとは何か、の次はニーズヒアリングです。ニーズヒアリングの基礎について説明します。

 

3-1.顧客の課題を見つける

ニーズヒアリングとは、言い換えれば「顧客の課題を見つけること」です。課題をみつけ、その顧客課題を解決するのがソリューション営業です。

 

顧客ニーズを理解するための5つの質問(ジョブ理論より)

「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセンの「ジョブ理論」にて、「顧客ニーズを理解するための5つの質問」というのがあります。下記の5つです。

  1. その人が成し遂げようとしている進歩はなにか。求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。
  2. 苦労している状況は何か。誰がいつどこで何をしているときか。
  3. 進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か。
  4. 不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
  5. その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、またその解決策のために引き換え(トレードオフ)にしてもいいと思うものはなにか。

 

3-2.課題を構造化する

一口に課題といってもいろいろな課題があります。課題整理し構造化することが必要です。

企業においては、課題を構造化・見える化し組織共有する必要があります。

3-3.勝てるニーズを見つける

 

3-4.儲かるニーズを見つける

 

3-5.ニーズの優先順位をつける

ニーズの強さは、課題解決の期待値で表されます。

課題解決による効果額の大きさ × 実現確度

 

 

 

 

 

ニーズを把握する方法

 

4.ニーズの強さを見極める

 ニーズの強さは、ニーズヒアリングの論点の一つが「そのニーズはあるか?」です。しかし、それ以上に重要な論点は「そのニーズは強いか? ニーズの強さはどのくらいか?」です。

4-1.ニーズ有無だけわかってもヒアリング失敗

ニーズヒアリング初級者にありがちなミスに、「ニーズがあるか/ないか?の確認だけして、ニーズの強さの確認が甘いこと」があります。

なぜか。企業は課題の宝庫、そして人の欲求は無限です。「もっと安くしてほしい」「もっと早くしてほしい」と、どちらかと言えばそうしてほしい。という課題は、無限にあります。

無限にある顧客の課題・要望に応えてもらちがあきません。では、どうするか。有無だけでなく、どのくらい強いのか?を考えることです。

 

 

4-2.ニーズ選択で重要なのはニーズの強さ

 

ニーズの強さは、課題解決の期待値で表される

課題解決による効果額の大きさ × 実現確率

 

 

5.ニーズヒアリングのやり方(How)

5-1.営業ヒアリングの基本

 

 5-2.ニーズヒアリングのスキル

 

5-3.ニーズヒアリングは仮説検証

ニーズ仮説を検証する作業がニーズヒアリングである。

 

 

 

6.意思決定構造を掴む DMUマップ

6-1.DMUマップとは

6-2.マンション管理組合のDMUマップ事例

 東邦レオで使っているマンション組合DMUマップ事例

 

 

7.買い手の論理とは、購買稟議の意思決定構造

7-1.受注とは顧客の稟議書決済がおりること

稟議書とは、企業が組織的、合理的意思決定を行うための仕組み。

 

7-2.RFP(要求仕様書)を出す

 RFP

 

 

hitoshi-ebihara.com

【社内調整力】『「稟議書」が中々通らない人の致命的な6欠点』

『「稟議書」が中々通らない人の致命的な6欠点』東洋経済オンライン

東洋経済オンラインに海老原が稟議書の書き方ついて、取材された記事が掲載されました。

サブタイトルは、「年100本稟議書を通した男が「通る秘訣」伝授」。

 

 

toyokeizai.net

 

(引用)稟議書を通すポイント

 

稟議書を通すノウハウを身に着けよう

『「素早く確実に稟議書を通せるようにならないと、多くの仕事をこなせず、成果も挙げられません。若いうちから稟議書を通すノウハウを身に付けたほうがいいですよ」
と話すのは、企業研修やコンサルティングを手がけるシナプスのチーフコンサルタント・海老原一司氏。
かつてIT企業で新規事業を手がけていた時、年間100本の稟議書を通していたという強者だ。』

 

 

稟議書に必要な5つのポイント

<稟議書に必要な5つの記載ポイント>
・承認を求める案件の具体的な「内容」
・その案件を実行する「目的」
・その案件に関してかかる「費用」
・その案件を実行した時に得られるであろう「リターン」
・その案件を実行した時に、発生する可能性のある「リスク」

会社が用意している稟議書のテンプレートは、これらの項目が明確に示されていない場合が多いが、稟議書を書く際は、上記の5項目が漏れていないかどうか、チェックしよう。

 

稟議書執行リスクに対する対処をしっかり書くこと

 

1で挙げた項目のうち、とくに念入りに書いたほうが良い項目は、「リスク」だ。

「稟議書は、一言で言えば『あら探し』をする書類。会社に損失を与えるようなことにゴーサインを出したとなれば、その上司の責任になりますからね。だから、リスクの部分はとくに注目します。ところが、若い人はリスクの記述が甘い人が多い」(海老原氏)

リスクに関しては、単にリスクの内容を書くだけでなく、そのリスクに対処していることを書くことが必要。たとえば「権利関係はクリアしている」「景品表示法に抵触していないかチェック済み」といったことを書くことで、初めて上司は安心する。

 

稟議書のリターンの記述が甘いとNG

 

『3.リターンに関する記述が甘い
リスクに加えて、どれだけの成果や効果が見込めるのかという「リターン」に関する記述が甘い人も少なくない。契約でも物品購入でも、お金をかけた以上は、必ずリターンがあることを示すことが必要だが、「実際には『大口顧客だから値引きして』といった程度しか書いていない稟議書をよく見かけました」(海老原氏)。

「今回の取引で値引きすることで、もっと高額な製品の受注につながる」といったリターンの可能性をきちんと明示することが必要だ。

 

稟議書を出す前に「健全な根回し」をする

『6. 根回ししないで、稟議書を申請する
ここまで稟議書の書き方について言及してきたが、稟議書を通す上で最も大切なポイントは別にある。それは、「稟議を回す上司などに根回しすること」だ。

海老原氏は、稟議書を提出する前に、必ず上司たちに「こんなことをやろうと思うんですが、良いですかねえ?」と軽く伝えていたそうだ。

「上司たちが嫌うのは、自分が聞いていない案件が、いきなり稟議書で回ってくること。そういった案件は『何かリスクがあるに違いない』といつも以上に警戒するのです。だから通りにくくなる」(海老原氏)

稟議書をあげてから「リスクが大きいので却下」といわれると、それを覆す理由を作るだけで大変な作業になる。しかし、事前に伝えておけば、その警戒感はなくなる。また、事前にダメ出しをされていれば、その部分を修正すれば、通りやすくなるし、そもそも「稟議書の内容説明のための呼び出し」という手間や、却下の可能性も少なくなる。

事前に伝える時のポイントは、稟議にかかわるすべての人に伝えること。「俺は聞いていない」となると、その人がダメ出しをしてくることもある。また、話は数分程度で済ますこと。忙しいなか、時間をとらせると、嫌がられるからだ。

「いかにも日本的なムダな風習だ」と根回しを嫌がる人もいるかもしれないが、そんな小さなコミュニケーションをするかどうかが、後に大きな差となってあらわれる。そう考えたら、やらない手はないだろう。

 

 

 

(2017/09/30東洋経済オンライン掲載)

 

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『半年で同期と差が付く社内会議の過ごし方』東洋経済オンライン

『半年で同期と差が付く社内会議の過ごし方』東洋経済オンライン

 

東洋経済オンラインに社内会議について、取材された記事が掲載されました。

toyokeizai.net

『新入社員の多くが、研修が終わり、配属先で仕事をしていると思う。そんな中、「社内の会議」に参加し始めた人も少なくないだろう。しかし、「何を話しているかよくわからないので、とりあえずじっと座っておくか」という人が大半ではないだろうか。しかし、企業研修やコンサルティングを手がけるシナプスのチーフコンサルタント・研修講師の海老原一司さんは、そんな行動を「もったいない」という。』

『そこで今回、新入社員が評価を高めるための、社内会議の振る舞い方について、解説していきたい。「会議は寝る場所」と考えている若手社員も、これを読んで考え方を改めるきっかけにしてほしい。

まず、新入社員にとって、社内会議には次の3つの意義がある。
1. 他の部署や先輩などに、名前と顔を知ってもらい、「有望な若手社員」であることをアピールできる
2. 会社の仕組みや仕事の内容を理解できる
3. 自分の能力を高められる

​そのためには、新入社員といっても、能動的なアクションを起こしていくべきだと海老原氏は指摘する。では、何をすればよいのか。以下で5つのアクションをご紹介しよう。』

 

(2018/07/02掲載)

 

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論理思考スキルが高い人は、ここが違う -伝わる文章は相手目線で書く

海老原です。

私が、論理思考研修の実例添削でよく指摘するのが「相手目線で書いていますか?」ということ。論理思考スキルが高い人は「自分目線」と「相手目線」を自由に行き来できます。

 

■論理思考のポイントは相手目線

相手目線で書かれていない文章例「駐輪場の申込書」

 

駐輪場申込用紙トップに「インターネット環境がない方の申し込みの流れ」とありました。ということは、「インターネット環境のある方」の申し込みサイトがあるだろう、といろいろ探しましたが、「インターネット申し込みサイトはない」ことが判明しました。

 

どうやら荒川区民(私=作成者からみた「相手」)は、紙の申込書しかないようです。

これは、おそらく申込書作成者が、申込書の配布先を振り分けるための文言でしょう。自社は、紙とインターネットの両方を用意しているが、荒川区には紙の申し込み方法しか提示していない。気持ちはわからないことはないですが、一番トップの目立つところに書くのは、相手=申込書を書く人に優しくないですね。

 私だったら、この1行目は削除。もしどうしても自分たち用の目印がほしいのなら、読み手が惑わない下の方に記載すべきでしょう。

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駐輪場の申込書

 ●申し込み作成者の自分目線と申込書を書く人の相手目線

 

駐輪場申込みをする人には「インターネット環境がない方=紙で申し込む」と「インターネット環境がある方=インターネットから申し込む」の2つがあり、案内する書類も異なる。つまり、自分目線で考えると場合分けがあります。

 

申込書を書く人、例えば荒川区民の目線で考えてみましょう。荒川区民は、紙の申込書しか選択肢がありません。場合分けなしです。

しかし、場合分けがある。つまり、別の選択肢(インターネット)があるように解釈できる文章の書き方をしています。ここで、私は迷いました。

文章の受け手である、相手目線で考えると、インターネット申し込みがあるというのは余計な情報、不要な情報です。

■論理的文章作成のポイント

●相手目線で文章の受け手の表情までイメージする

論理思考研修では、自分が書いた「仕事のメール」を題材として使います。そこで、強調するのは、メールを書く目的を押さえることです。

目的を押さえるとは、起きてほしいことのイメージを持つこと。メールの場合、メールを受け取った相手が何を感じるか、何が起きるかを映像としてイメージするように指導しています。

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メールを受け取った相手の反応を想像する

「このメールを受け取ったら、●●さんは、どう感じると思う?」と問いかけ、相手の発言や表情まで思い描いてもらいます。

 ●論理的文章作成のポイントまとめ

 
  • 論理的文章は相手目線で書く
  • 一旦自分目線で書いてもよいが、最後に相手目線で読んでチェックする
  • 論理思考スキルが高い人は、相手の発言や表情まで思い描くことができる。想像力が高い

 

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チーム力を底上げする論理思考研修のやり方

癒し系ロジカルシンカーの海老原です。

チーム力を底上げする論理思考研修のやり方について考えてみました。

 

■論理思考研修のやり方

 まずは、効果的な論理思考研修を行う上で、私が注意していることをまとめます。

●誰でも使えるロジカルシンキングに重要なポイントしか教えない

論理思考3つのポイント

論理思考研修では、以下の3つのポイント「だけ」を教えています。

  1. 目的を押さえ続ける
  2. 構造的に考える
  3. 「要は」「例えば」を使いこなす
    「主張」と「根拠」のセットを使いこなす。
「ロジックツリー」「ピラミッド・ストラクチャー」は難しい

複雑なことは、一切教えません。

例えば、ロジカルシンキングの2大ツールである「ロジックツリー」「ピラミッド・ストラクチャー」も教えません。ロジックツリー、ピラミッド・ストラクチャーは、広く知られているロジカルシンキングの基本ツールです。しかし、この2つの基本ツールですら、日常で使うには難しいのです。

私が論理思考研修で、最初に聞く2つの質問があります。

①「論理思考、ロジカルシンキングを勉強したことがありますか?」

②「ロジックツリーやピラミッド・ストラクチャーを実際に使ったことは何回ありますか?」

 勉強したことはある。しかし、基本中の基本ツールともいえるロジックツリー、ピラミッド・ストラクチャーでさえ、1回も使ったことがないという受講者がほとんどです。

 

 

●自分の業務のネタで論理思考する=仕事のメールをネタにする

「仮想的なロジカルシンキング練習問題」ではなく、「日常の自分自身のロジカルシンキング課題」を問題として、論理思考力を鍛えます。

 

毎回提出必須なのが、実際に送った「仕事のメール」です。身近で、自分事の問題でロジカルシンキングをトレーニングすることで、研修が終わっても日常で使えるロジカルシンキングを目指します。

 

●個別フィードバックする

 海老原の論理思考研修では、仕事のメールなど、受講者全員が1人1人異なる論理思考課題を提出します。講師は「赤ペン先生方式」で全員分の実務メールを添削し、改善ポイントをフィードバックします。

フィードバックでは、「目的」「構造化」「要は/例えば」の3つのポイントからフィードバックします。

■チーム力を底上げする論理思考研修のやり方

 私が最近思っているのは、論理思考トレーニングは同じチームのメンバーで取り組むとスキルアップ・習慣化の効果があがる。また、チームメンバーが論理思考を学び、使いこなす中で個人の力はもちろんチーム力そのものが向上するということです。

●チームまるごと論理思考トレーニングに取り組む

論理思考トレーニングは、スクールでも研修でも個人で参加する場合が多いでしょう。

私が勧めているのは、チームで同じ論理思考研修を同時に受けることです。会社組織の●●部、✕✕グループ、といった普段一緒に仕事をしている人が同時に研修に取り組みます。

1つ目のメリットは、組織の共通言語ができることです。組織共通言語ができ、コミュニケーションが円滑になることは研修共通のメリットです。ロジカルシンキングでは「今日の会議の目的は?」「要は、どういうこと?」といった基本的な共通言語が作れます。

しかし、普段働いているチームメンバーが一緒に研修すると「今日の会議の目的はわかった。もう少し具体的にすると、こういうことでよい?」といった言葉のニュアンスレベルまで共有できるようになります。

 

●マネジメントがコミットする

 チームで論理思考研修を行う場合、最近重要だと思っているのが、マネジメント・上司の論理思考トレーニングへのコミットメントです。

●日常業務とリンクさせる

 

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論理思考講師のエグゼクティブコーチング

論理思考講師がエグゼクティブコーチングしてみました。今のところ、5打数5安打。さらに安打数を上げていきます。

 

 

■論理思考講師のエグゼクティブコーチング

●エグゼクティブコーチング形式

・時間:1回2時間

・場所:ホワイトボードのある会議室

・相談内容:何でもあり

 

●エグゼクティブコーチング勝敗

・5打数5安打

※ 2時間のディスカッションで、「議論が進んだ感」「問題が整理された感」があった比率(感覚値)

 

■エグゼクティブ・コーチングを受けることのメリット

●エグゼクティブ・コーチは孤独な経営者の相談相手

「経営者は孤独」です。知人の経営者からも「社長になってくると相談相手がいない」との話を聞きます。

よく言われますが、社員は経営者を見ています。個人的な悩み、自社の業績低迷に関する悩み、など経営者にはたくさんの悩みがあるでしょう。しかし、悩んでいることを社員に知られてはいけないことも多いでしょう。

エグゼグティブ・コーチングでは、コーチは守秘義務を必ず守ります。誰にもいけない経営者の悩みを話すだけでも、心が軽くなる場合も多いでしょう。

 

●エグゼクティブ・コーチングで頭が整理され、良い意思決定につながる

 

経営者は、一般に能力も意志力も持ち合わせ、高い「意思決定力」を持っています。しかし、高い意思決定力を持つ経営者でも、社運を決定するような重要な意思決定は慎重に行う必要があるでしょう。

そこで、少しでも成功確率の高い意思決定のためにやるとよいのが、自分の考えを他の人に話すことです。人に考えを話すこと、言語化することで自分の思考が整理されます。

コーチから「それを選んだ根拠はなんですか?」「他の選択肢はありませんか?」といった質問をし、それに答えることで、より強固なロジックに支えられた意思決定ができます。

また、頭が整理され、より強い根拠を持つことで意思決定結果により自信が持てるようになります。

●エグゼクティブ・コーチングで第三者視点のフィードバックを得る

プロゴルファー、プロテニス選手など、トッププロはコーチをつけています。現役トッププロの方が、スキル・知識などは上かもしれません。それでも、彼らはコーチを必要としています。

トッププロが自分のコーチに求めているのは、第三者視点のフィードバックです。特にスポーツの世界は自分だけでは気づきにくい微妙なフォームのブレや癖など、気づいたことをフィードバックできます。

「フィードバックのない練習は、カーテンをかけたレーンでボウリングをしているようなもの」という言葉があります。自分の考えたこと、行動、思考の癖など自分自身では気づきにくいことに、客観的フィードバックを得たければ、第三者からフィードバックをもらうのが効果的です。

 

 

 

■論理思考講師のエグゼクティブコーチングは普通のコーティングと何が違う?

 

 

 

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『情報検索力』を論理的に考察してみる

理工学修士兼MBA。IT業界歴15年、コンサルタント歴6年。Googleなどの「検索」は比較的使いこなしている方だと思います。

そんな私が、今回は「検索力」について考えてみたいと思います。

 

■1.検索力とは


■「検索力」を考えるきっかけ


「検索力」とは、何か?
私がイメージしているのは、「Google、Yahoo!の検索エンジンの性能はどっちがよい?」といった話ではなく、検索を行う各個人の「検索を使いこなす能力」「情報を探し出す能力」のことです。
一方、今回は、とりあえず「本や論文をどう読みこなすか」といった、「調査力」までは踏み込まないことにします。


私が、検索力について考えたのは、以下のようなことを頻繁に経験したからでした。

[後輩]「この商品の仕様がわからないですけど、知りませんか?」
[私 ]「え?調べたの?」
[後輩]「昨日から調べてるんですけどみつからないんですよ」
[私 ] ???
     Googleで検索開始10秒後、、、
    「ここに載っているけど。これじゃない?」
[後輩]「あっ。。。これ、ですね。。(汗)」

二人の違いは何でしょうか?
これが、「検索力の差」ではないかと思っています。


■検索力による情報格差
今は、世界中のありとあらゆる情報がインターネット上にあふれています。
そして、Googleをはじめとする高性能の検索エンジン。
これらから、人々の情報格差はなくなると言われています。

しかし、果たして本当にそうなのか?誰でも平等に情報を得ることができるのか?
というのが、私の疑問です。

確かに、住んでいる地域の違い、地位の違いなどによる、これまでの情報格差はなくなりました。
しかし、あまりにも入手可能が情報が多いため、適切な情報にたどり着ける人とたどり着けない人がいる。
「たどり着ける可能性がある」のと「実際にたどり着ける」=「情報を入手できる」のは異なる。
つまり、「(各個人の)検索力による情報格差」があるのではないかと考えています。


■検索力の価値
ちなみにこういう話をすると、安易に検索に頼ることの弊害を強調する人がよくいます。
「知識より思考力が大事だ」と。
もちろんそういう面もありますが、すべては使い方しだい、
道具に善悪はなく、それを決めるのは使う人である、と思っています。

しかも、そもそも、知識or思考の二律背反ではなく、知識(or情報)と思考の両方を狙っている
私には、知識か思考かの選択というのは意味のない議論です(笑)

もちろん、確かに検索にあまり頼らないほうがよい場面もあるでしょう。
特に思考のプロセスが重要な場合、一足飛びに回答に飛びつくのは危険です。


しかし、プロセスはよいから結果だけ手早く知りたい場合も多々あります。

私が関わっているITの分野だと、「この機器とこのソフトウェアの組み合わせで不具合がでた。
回避方法はこれ」というような情報は、結果だけ手早く知りたいところ。
そうでないといつまでたっても終わりません。
こういう情報は、「検索力」の差が如実に現れるところです。
1ヶ月間解決しなかった問題が、検索力のある人が探したら、1時間で分かった、なんてことも
しばしばあります。

こういった、結果・事実情報に手早くたどり着きたいとき「検索力」は強力な武器となります。

 

 

さて、以上のように、まず今回は、検索力とは何か?なぜ、検索力を考える必要があるのか?
について考えてみました。
次回は、検索するための力とは何なのか?検索力の構成要素について考えてみたいと思います。

 

■2.検索力を要素分解してみる

私が考える検索力とは、、、
 【検索力】=【仮説力(&想像力)】×【速読力】×【知識(力)】×【情報判断力】
ではないかと思っています。

■検索力の分解した要素それぞれについて考える
以下それぞれの要素について考えてみます。

●1.仮説力及び想像力
検索するときのステップは大体こんな感じだと思います。
0)まず、ネットで調べられそうな情報か(調べるべきか)判断する
1)とりあえず、関連しそうな単語を適当に入れてみる
2)検索結果を見ながら、ワードを調整
 単語を変える。2語にしてみる。など
3)当たりそうなWebがあれば、さっとみてみる。
4)(そこで情報があれば終了だが)Webをみた結果をみてワードを調整

これらは、まさに仮説・検証サイクル。
このサイクルをいかに高速にできるかが勝負となります。
一般的な課題解決でも、仮説検証を何回も回すことが推奨されますが、Webの
場合は、短いときは、 慣れた人なら、最短で5秒ぐらいで1サイクルでしょう。
つまり、ここで必要な「仮説力」とは、ざくっとでよいので、高速で仮説を出し瞬時
に判断できる能力です。

ここで、私が結構重要と思うのが、「想像力」です。
Web検索は、求めるWebページがどのようなワードで記述されているかの読みの勝
負。いかに、そのページに載っていて、他のページに載っていない単語(の組み
合わせ)を見つけるか。
ここには、記述内容を予想する「想像力」が求められます。
(ロジカルシンキングにも近いかも)

●2.速読力
次に、「速読力」。これは、やはり早ければ早いほどベターです。
特に、先ほど述べたように、検索を高速で何度も繰り返すために、「ぱっと見」で、情報の善し悪しの有無を判断する能力が求められます。

●3.知識(力)
あまり強調されることはありませんが、個人的に実は重要だと思っているのが「知識」。
検索技術普及=知識不要、という論調もありますが、探したい分野の基本を押さえているかどうかで、検索できるスピード・深さは、格段に変わります。

イメージ的には、「自分の知識という円」を思い描いてみましょう。
円の中が「知識あり」、円の外が「知識なし」。
自分が効率よく調べられる範囲は、円の周辺付近まで。元の円が大きければ大きいほど、調べられる範囲は広がります。

あとは、もちろん完全に未知の分野を調べることもあるので、そのとき持っている知識だけでなく、調べながら高速に 知識をつける力(例えば、この分野では、このワードを使うのね、とか)も必要 になってきます。

●4.情報判断力


最後に必要なのが、見つけた情報を判断する能力です。
インターネットの情報はまさに玉石混淆。
プロフェッショナルから素人まで、様々な人が情報発信しています。
そして、多くの無駄な情報が存在し、時には間違った情報さえあります。
これらを、取捨選択、真偽を判断し、情報を取り込まなければいけません。

ちなみに、私が考える情報判断するための指針は、大きく3つあります
1)事実と意見を分ける
 読み物系は別として、情報として入手する場合は、特にネットの場合は、「事実」
 と「意見」を明確に切り分けなければいけません。文章によっては、「事実のように
 書いてある、思いこみの意見」もあるので、要注意ですね(笑)
 私の場合は、場合にもよりますが、「意見」は単に「とある1名の人がそ
 ういう意見をいっていたという『事実』」として、頭に入れています。
2)情報ソース、根拠を当たる
 書いている人や中身にもよりますが、曖昧な情報の場合は、その根拠、情報ソースをさらにチェックします。
 例えば、IT業界では、「FBIの調査によると、情報漏えいの80%(時には、70%とか、91%とか)は内部犯行である」という「都市伝説」があります。
 「FBI」の調査と言われるとみんな納得してしまいそう(笑)
 しかし、たいていのプレゼン資料では、「FBI」以上の細かい出展は明らかに されない。というか、みんな他の人がいったのを2次利用しているだけで、実 際は調べていないと思われます(笑)
 私もちょっと気になって調べたことがあるのですが、FBIはそこまでは断定していないというのが定説となっています。
 http://it.nikkei.co.jp/business/netjihyo/index.aspx?n=MMITs2475026122002
3)ダブルチェックする
 そもそも出展がない情報もあります。「この製品使ってみたら私はこうでした」っという類の個人の情報です。これは、事実と根拠をチェックするのも必要ですが、必要ならダブルチェックするしかないでしょう。要は、他の人はどうかを再検索することによって、精度を高める。時には、ダブルチェック、トリプルチェックをします。

 


【検索力】=【仮説力(&想像力)】×【速読力】×【知識(力)】×【情報判断力】
以上、「検索力」について考えてみました!

 

 

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【書評】『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす』

1.『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす』

結構本好きな私。
最近はだいたい年50冊ペースで読んでいます。

自己啓発系書籍も結構読んでいますが、個人的に一番のお勧めが。これ、
『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす』
です。


「強み」と「才能」の定義

「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」 の基本的考え方です。

「多くの人、企業が『弱点克服』に重点を置いている。それよりも『強みを伸ばすこと』にフォーカスしよう」

 

次に、強みと才能の定義。
・強み=才能(先天的)+知識+技術(2つは後天的)
・才能=無意識に繰り返される思考、感情、行動のパーターン。才能となる様々な資質。
と定義しています。

(ここで定義する)自分の「才能」を発見しましょう。そしてそこに、「知識」「技術」をプラスして「強み」にしていきましょう。 という流れの本です。

「才能」の定義が一般的なものとちょっと違うかな?
(行動特性とか志向に近い?)

強み(才能)の発見
強みを伸ばすというのは、良く言われることですが、特に個人としては、結局弱点克服に目がいってしまうことが多いですね。
強みにフォーカスしろ、と言われても自分の強みって何だっけ?という方のために、具体的に強み(才能)を発見してくれるのが、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』の最大の特徴です。

この本を買うと1冊ごとにIDがついており、「ストレングス・ファインダー」というWebのツールが使えます。
この才能を発見するためにWebで質問に答えていくと、34の才能のなかから、その人の5つの才能(5つの強み)を教えてくれる仕組みとなっています。
ちなみに、これは米国のコンサル会社ギャラップ社の200万人のインタビュー結果に基づいてなされているそうです。

2.わたしの5つの強みを見出し、活かす

わたしの才能(5つの強み)とは?

私の才能は以下でした。

  1. Learner/学習欲: 学習欲という資質を持つ人は、学習意欲が旺盛で、常に向上を望んでいます。特に結果よりも学習すること自体に意義を見出します。
  2. Input/収集心: 収集心という資質を持つ人は、より多くの知識を求める知りたがり屋です。ものを集めたり、あらゆる種類の情報を蓄積したりするのが好きな人が、このタイプに多くみられます。
  3. Intellection/内省: 内省という資質を持つ人は、頭脳活動に多くの時間を費やします。内省的で、自分の頭の中で考えるのが好きで、知的な討論が好きです。
  4. Analytical/分析思考 : 分析思考という資質を持つ人は、物事の理由と原因を追求します。状況に影響を与える可能性のあるすべての要素を考慮に入れる能力を備えています。
  5. Responsibility/責任感: 責任感という資質を持つ人は、一度やると言ったことは必ず実行する精神の持ち主です。正直さや忠実さなどの普遍的価値観を達成することに、意義を感じています。


結果を見てみると、かなり納得感がありました。
確かに、この辺の志向は普通の人より、ものすごく強い。
ある程度私も知っているも納得感あるでしょう(多分(笑))。


弱点克服でなく、見いだした強みを活かす
私がこの本をはじめに読んだときは、自分の強みのマイナス面がでており、それを克服できないか、1,2年ほど悩んでいた時期でした。
つまり、強みを忘れて、弱点克服しようとして、なかなか結果がでない時期。

私の場合は、これを読んで結果もしっくりきたので、「ああ、やっぱり自分の強み(才能)は、これなんだな。やはり、ここに立ち戻ろう」と思いました。

以来、この辺を鍛え、今となっては「才能」が「強み」にまでなってきたかなと思っています。あのままだと、単なる「才能」(ポテンシャル)だけで終わっていたでしょう。

「学習欲」「収集心」「内省」なんかは、今となってはすべてに使える「強み」だと思っていますが、「才能」の段階では、単に「行動が遅い人」「不必要な情報収集、勉強に時間を使っている人」となっていました

『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす』は私の今にかなり影響を与えた本です。
機会があるたびに、周りの人たちに薦めています

「才能」を発見し、「強み」にフォーカスしよう! 

3.ストレングスファインダー5つの強みを拡張

(2019/12/03追記)

グロービス知人の近藤さんに「ストレングスファインダーコーチ」をしてもらう。
ストレングスファインダーは、15年位前から行動指針の一つとして使っている。

はじまると、机に並べられる10枚のカード。お、10枚なんですか?
近藤さん曰く「Top5は常にスイッチオン状態」「6-10はスイッチを意識的に入れることができる」と。
ほー、トップ6から10を使う発想は、これまで全くありませんでした。
しかし、会話の中で指摘してもらったが、6から10の強みも明らかに使っている。

今回、この「6-10のプラス5個のフレームを持てた」ってのが最大の発見。例えるなら、3C分析しか知らなかったところに、5Fを知ったみたいな。えっ?わかりにくいですか(笑)

毎年やってるスキル棚卸しの時の「フレーム」として今後使ってみます。

 

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10個の強み

 

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